トヨタの自己否定と変革への本気度 「世界に通じるクルマ」へ
「世界に通じるもの」が作れるのか
ところが、数年前はほぼ5割を達成した国内シェアが2014年実績では4割まで落ちてきている。グローバルでは好調なトヨタだが、少なくとも国内マーケットに限って言えば、従来トヨタがターゲットとしていなかった「クルマ好き層」に訴求しなくてはならない状況が現れつつあるように思うのだ。 そのタイミングでトヨタは自らが変わったという広告をスタートした。 「TNGA、46のこと」と名付けられたこの広告の動画の冒頭で、トヨタは「世界に通じるものが作れるのか。」「未来に通じるものを作れるのか。」と自らに問いただしている。それはトヨタ自身がこれまでのトヨタ車は「世界に、未来に通じない」という自己否定をしたということである。 おそらくこの広告プランは社内で物議を醸したことだろう。広告主体がトヨタではなく、トヨタの情報発信サイトであるGAZOOになっているあたりからもそういう軋轢の形跡は見て取れる。多くの先達の成果を否定し、新しい価値を打ち立てることは大きな組織ほど難しい。東芝の一連の隠蔽体質と比べた時、トヨタのこの姿勢の素晴らしさは賞賛に値するだろう。ましてやトヨタの場合は違法行為でも何でもなく、単純にクルマ作りの方針の話なのだ。 大改革に向けて、最も難しい過去の自己否定をやってのけたという点で、筆者は今回のトヨタの意気込みに拍手を贈りたいと思っている。 さて前述の通り、この広告はTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)でクルマ作りを変えた技術的ポイントを46項目に渡って、長文で表現している。そもそもこの作りから言ってトヨタらしくない。 トヨタの商品紹介ページに行けばわかるが、クルマを構成するメカニズム、例えば過給の有無ひとつ調べるのに、あるいはサスペンションの形式を調べるのに、どれだけの階層を降りていかなくてはならないのか。 これはトヨタに限った話ではないが、それはもう、一般ユーザーはメカニズムになど興味がないという割り切り以外の何物でもない。しかし、クルマ好きはそういうことが知りたい。ライトユーザーが大事にされている一方で、クルマ好きはないがしろにされてきたのである。 もはやそういう事態を嘆く気も失せていた今、トヨタはTNGAで何をどう変えたのかを具体的に、ユーザーに向けて自らの言葉で語り出したのだ。