今求められる「学習者目線の学び」とは?3人の教育関係者が語る“学び続けるために必要なこと”
子どもの興味・関心から学びを広げて
太田氏は寺前氏の話に賛同し、「子どもが発するつぶやきを丁寧に拾い、安心して授業に参加できる環境を整える教員の姿勢は、子どもの学びを深めることにつながります」と述べたうえで、さらに自身の息子が小学生の時に出会った先生とのエピソードを紹介しました。 太田氏の長男は、美術大学を卒業して現代アートを手掛ける美術家として活動しています。小学校時代はまったく勉強せず、教科書は落書きだらけだったそう。3年生の担任からは「教員の言うことを聞いてくれません」と泣かれてしまったこともあったと言います。 人生を大きく変えるきっかけになったのは、5年生の時の担任の先生との出会いでした。 「彼の授業中の落書きをほめてくれたのです。絵が好きなことを認め、『国語のこのシーンを絵に描いてみれば』などと、絵を入り口として興味を広げ、学校の学びにつながるよう声をかけてくださいました。そうしたことが続くうちに、学びに対して前向きな気持ちになり、その後、美術大学に進学。大学では、絵画の歴史や人間の心理などにも興味を持つようになり、哲学や民俗学なども意欲的に学ぶようになりました」(太田氏) 一見学校の授業とは関係ないように見えることでも、本人が興味を持ち集中して取り組んでいることをきっかけに学ぶことの面白さを体験することができる。そこから学びを深めていくことによる成長は目を見張るものがあったと、太田氏は自身の体験から語りました。
周囲の大人も学び続けることが大切
美術科教員でもある小林氏は、「教員はつい自分の教えたいことを優先してしまう傾向がありますが、私は『この問いかけをしたら、生徒がどんな反応を返してくれるかな』と楽しみにしながら、授業を設計していました」と、教員側からの意見を語りました。 さらに小林氏は、学習者目線の学びを実現するためには、周囲の大人も学び続けることが大切だと強調します。 「指導主事の業務の中で、私の専門である美術教育に関するものはごく一部ですが、どの業務も自分の視野を広げてくれると感じます。子どもの興味・関心を広げられるよう、保護者のかたにもさまざまなことにアンテナを張り、学び続けてほしいと思います」(小林氏) 登壇者による意見交換中、視聴者からは 「子どもも大人も学び合える、対等なつながりが持てる寺前さんのスクールは、居心地がよい場なのだと思いました」 「太田さんの話は、子育てのヒントになりました。小さいころからやりたいことを止めなければ、そこから学びは広がり、自分で学ぶ力が身に付くのではないかと思いました」 など、多数の意見が寄せられました。 人生100年時代において、学び続けることはすべての世代にとって重要なテーマといえます。学習者の興味・関心を尊重しながら、共に学び合う姿勢を持ち続けることが、これからの時代を生きる力になるのかもしれません。