「もしチンパンジーの団体が飛行機に乗ったら?」…進化論的にみた人類の有する能力の”異常さ”
チンパンジーの団体が飛行機に乗ったら?
米国人人類学者のサラ・ハーディは、乗客がチンパンジーの場合と人間の場合とで飛行機でのフライトがどんな様子になるかを比較している。おそらく、飛行機での移動を本当に好きな人はそれほどいないだろう。搭乗するまでにたくさんの面倒があってイライラすることも多いが、それでもなお、搭乗プロセス自体はかなり文明的であることは否めない。 最後には、見知らぬ人たちと狭い場所に詰め込まれて、じっと動かず静かに、わけのわからないものを食べさせられて、さらにわけのわからないメディアで気を紛らわしながら、何時間も座ることになる。ときには酔っ払った乗客が機内をさまよったり、赤ん坊がいつまでも泣き叫んだりするが、本当に危機的な状況や暴力沙汰を経験した人はほとんどいないだろう。 では、同じような条件に置かれたら、チンパンジーはどう行動するだろうか?実験してみようと思ったのなら、やめたほうがいい。破壊された座席、割れた窓、カーペットの血だまり、ちぎれた耳や指や生殖器、そこいらに横たわる死骸、雄たけび、震える歯から聞こえるガタガタという音が、その結果だろうから。 チンパンジーが―あるいは人間以外の動物のすべてが―、野蛮で、衝動的で、協調性に欠ける野獣だと言いたいわけではない。ただ、人間とほかの動物では、協調能力の働きが異なっているのだ。 人間のほうが、頻繁に、柔軟に、寛大に、節度をもって、悪意なく、協調する。しかも、見知らぬ相手にも合わせる。何らかの理由で、人は協調することの利点を理解し、活用するようになった。同種の仲間をさまざまなウィン・ウィンの関係に引き入れる能力がある者には、新たな可能性が開ける。私たちはこの点に気づき、利用するのが驚くほど得意なのだ。 『人間関係は勝ち負けじゃない!「ゲーム理論」で読み解く《協力の方程式》…なぜウィン・ウィンな関係は難しいのか?』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭
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