がん宣告から8年―竹原慎二「人生の楽しみ方をはき違えていた」闘病生活を経て気づいた大切なこと
闘病中はブログに救われた―多くの実体験を知り、同じ境遇の人とつながりを持てた
――家族以外で心の支えになったことはありますか。 インターネットのブログですね。いろんな方のブログを読むと、僕と似たような患者さんが実はいっぱいいることがわかった。当時は自分の名前を公表していませんでしたが、つながって友達になり、お互いやり取りが始まる。そうしたら励まされるんですよ。なかにはステージ4の人でも「私は末期って言われたんですけど、頑張って今も生きています。10年たっています」というのもあった。それを読むと僕も、「やればできるんだ、頑張ろう」。希望というか、逆に今まで不安だったのに、「やってみよう」と前向きに気持ちが高ぶってくる。他にもがん治療法や、余命間近でやり残して後悔した話とか、多くの実体験を知ることができて、闘病中はそうしたつながりに救われました。 その一方で、「再発しましたが、頑張っています」とあったのに、何カ月後にブログが突然更新されなくなって、後日、家族の方が「旅立ちました」という報告があることも。そういうのはたしかに落ち込みますけど、ブログを通じて見知らぬ人とつながって、励まされたり励ましたりという関係をしっかりと築けたような気がします。振り返ってみても、僕にとってそれは新たな発見でしたし、確実に自分の人生のプラスになりました。
「私はまだ生きています」という情報は、励まし以上の強烈なメッセージ
そしていろいろ考えた末、僕は、人生の後悔のほうではなくて、手術が終わって退院したら、10個の目標を達成すると決めたんです。5年後の東京オリンピックを絶対見る。娘の卒業式に一緒に学校の正門の前で写真を撮る。広島カープの始球式で投げる。大好きなゴルフの番組に出る。ジムで日本チャンピオンをつくる。日本一の富士山に登る。フルマラソンを完走する、など。幸せなことに、現在はほぼ目標を達成していて、ジムで日本チャンピオンをつくるのと、ゴルフでシングルプレイヤーになることのふたつだけができていない。これはなかなか厳しいですね(笑) ――すごくいい話ですね。 どんな状況になろうとも、目標をつくったら楽しいですよ。僕の場合、それが生きがいになりました。同時に、家族やブログでつながった仲間と、闘病生活を共有し、共感できたことが喜びでもあります。 たとえば病人に「頑張って」と声をかけますよね。ちょっとへそ曲がりな言い方になるかもしれないけど、当の本人は必死で頑張っていて、それは当たり前。「頑張っているんだけど」と苦しい受け止め方になることもあります。しかし、自分と同じような体験者から「私はまだ生きています」という情報が伝わると、「頑張って」という励まし以上の強烈なメッセージを感じられる。心底勇気づけられるんです。 がん宣告から僕は8年目。今生きています。病気を公表してからネット経由でたくさん相談は来ますし、時間が許す限りやり取りしています。心が弱っているときに、励まされるとめちゃめちゃうれしいんです。俺をこんなに心配してくれる人がいるんだ、と。だから僕も、きちんと発信してコミットしていこうと思います。