テクノロジーが発展した世界でどう生きるか? 映画『本心』監督&脚本・石井裕也×主演・池松壮亮インタビュー
出会って約10年の時を経た、お互いの存在について
──おふたりが『本心』でタッグを組むのは9作目になります。相性の良さをどのように感じていますか? 池松 石井さんに出会う前、共通の知り合いの方に「すごく似てるよ」と言われていました。実際お会いして、感覚的に近いところをさまざま感じました。でもそれは石井さんの映画を観ても感じていたことでした。僕にとってシンパシーを感じられる存在で、なにより対話や物作りを石井さんとしていて毎度楽しいなと感じます。 石井 池松くんとなんで気が合うのかは考えたことなかったですね。ただ、池松くんといまの社会や時代をどう見て考察しているかという話をすると、単純に面白くて刺激になります。 ──『本心』もそういった会話の中で構築されていったところがありますか? 石井 そうですね。 池松 出会って10年以上経ちますが、映画が目の前にある時も無い時もたくさんの対話を繰り返してきました。そういった意味では、その対話の延長上に今作との出合いがあったのかなと思います。 ──『本心』において監督が池松さんの凄みや魅力を感じたのはどんなところでしょう? 石井 僕としては朔也を演じる上で大きなポイントがふたつあったと思っています。ひとつ目はVFではない生身の人間の身体をどう使うかということ。もうひとつはタイトルに「本心」とある通り、本当の心とは何かという問題を俳優自身が探らなければいけないということ。俳優は芝居をしているので、自分のやっている芝居が本当なのか嘘なのかということを考えざるを得なくなる。脚本を読めばその二つのポイントが大事であり、そこを捕まえにいかなければいけないということはわかると思うのですが、池松くんのようにそれを当たり前にできる俳優はなかなかいません。 池松 身体性については俳優にとって最も重要なテーマだと思っていますし、今作ではなおさら意識するところがありました。 ──池松さんがこれまで監督とご一緒する中で凄みを感じた部分というと? 池松 石井さんが新たな題材に出合う度に、飽くなき探究心と巡り合う問いや答えの深度に毎回驚かされます。今作においてもこうした壮大なテーマだったからこそ尚更際立っていたと思います。映画化が決まってから撮影までの3年の道のりは、険しくもありましたが、迷い込まずにここまで辿り着けたのは、石井さんが揺るがないビジョンを持って今作を導いてくれたからだと思います。