「嫌いだったら見なければいいのに…」どうしてわざわざ悪口を言うのか? 心理学者が解説する“アンチ”の意外な心理
好きな芸能人やキャラクターなどの「推し」を応援する人々がいる一方で、いわゆる「アンチ」として悪口を言い続けている人々も存在します。「好きの反対は無関心」という言葉もありますが、一体「アンチ」の心の中では何が起きているのでしょうか。 【写真】この記事の写真を見る(8枚) 愛知淑徳大学の心理学部教授である久保 (川合) 南海子さんは、自分の認識が世界の見え方に影響を与える「プロジェクション」という心の動きについて指摘します。特に、実際には「ない」ものを現実に「ある」ものへ重ね合わせてしまうプロジェクションのことを、異投射と分類しています。 ここでは、そんなプロジェクションについてさまざまな事例を紹介しながら解説していく『 イマジナリー・ネガティブ 認知科学で読み解く「こころ」の闇 』(集英社新書)より一部を抜粋。「アンチ」と「推し」の意外な共通点とは――。(全4回の1回目/ 続きを読む ) ◆◆◆
熱意を込めて悪口を言う「アンチ」
ある有名人が豪華なドレス姿の写真を公開したら「さすが○○さん、こんなドレスも着こなせて素敵!」というファンからの賞賛もあれば、「また○○が似合わないくせにド派手な格好してる!」というアンチからの悪口もあるでしょう。その人のドレス姿は同じなのに、周りの反応は実にさまざまです。 とても好きで熱心に応援する対象が「推し」だとすれば、ある特定の対象を嫌って反発する人を指す言葉に「アンチ」があります。「私の推しは○○です」というのと反対に、「私はアンチ○○です」というように表現されます。アンチの対象は、推しとなる対象と同じくらい多岐にわたります。アンチには人や物だけでなく、団体、企業なども含まれます。 私は「推し」を「その対象をただ受け身的に愛好するだけでは飽き足らず、能動的になにか行動してしまう対象」として定義しています。この「愛好」の部分を「嫌悪」に変えると、それはそのまま「アンチ」の定義として適用できます。つまり、アンチとはある特定の対象を見た時などに「これ、嫌い」と思うだけではなく、自分からその嫌いな対象になにか働きかける行動が見られる状態だといえます。 あなたに愛好する対象○○があるなら、試しにネットで「アンチ ○○」と検索してみてください(自分が好きな○○の悪口なんて見たくない! という人は、知っている有名人で試してください)。 もし○○に対して、アンチの情報発信サイトやアンチ・コミュニティがあったら、実にさまざまな情報やコメントのやり取りがなされているはずです。アンチは時として熱心なファンのように、対象の情報を収集し、状況を詳細に分析します。そして、熱意をこめて悪口を言います。
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