「嫌いだったら見なければいいのに…」どうしてわざわざ悪口を言うのか? 心理学者が解説する“アンチ”の意外な心理
嫌いだったら見なければいいのでは?
嫌いだったらわざわざ見なければいいのでは? と思うかもしれません。しかし、好きの逆は、そもそも関心がないという無関心であって、嫌いは「反転」です。対象に働きかける主体の表象はまったく異なりますが、対象へ働きかけるエネルギーの大きさは同じなのです。 「アンチは推し」などという言い方もありますが、その行動の背景にあるこころの働きには、たしかに共通点があるといえるでしょう。たとえば、推しだとしたら「あばたもえくぼ」となり、アンチであれば「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のです。これは、ハロー効果(後光効果)という現象で、ある対象を評価する時に、対象が持つ顕著な特徴に引きずられてほかの特徴についての評価が歪められてしまうことを指しています。 これは、あばたという一般的にはネガティブにとらえられる身体特徴をポジティブなチャームポイントであるえくぼとする異投射、袈裟というただの衣装に憎い坊主の表象を投射してネガティブな価値を見いだすプロジェクションです。あるこころの働きが、主体の表象の違いによってポジティブにもネガティブにも同じような効果をもたらすことがわかります。 ファンからすれば、自分の好きな対象がアンチによって悪く言われるのはつらいことです。 SNSなどのコミュニティでは、アンチに対してファンが、そんなに嫌いなら見ないでください! と訴えたり、私の推しはそうではない! と反論したりして、双方のぶつかり合いも激しくなります。おたがい信念とエネルギーが強いので、ばあいによってはどんどんヒートアップしてしまうこともあります。 ファンのありようにもいろいろなバリエーションがあるかとは思いますが、アンチの人たちのバリエーションはファンのそれよりも多いかもしれません。元はファンだった人がなにかのきっかけで失望してアンチになったり、なにかと目につくので見ているうちに嫌なところが多くてアンチになったり、自分の価値観と異なることが気に入らないのでアンチになったり、立場に見合わない能力なのに偉そうにしているのが癇にさわってアンチになったり、単になにかに悪態をつきたいからアンチになったり、あげればキリがありません。
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