<軽減税率>事業者コストが中小企業に過大な負担?
どのような負担が発生する?
ここまで価格転嫁の支援施策について触れてみました。では事業者にとって実際にはどのようなコストが発生するのでしょうか? この辺はケースバイケースですが、対応が必要となるものはPOSレジなどの在庫管理機能やインボイスの発行の仕組作りといったモノが想定されます。 特に在庫管理機能について、複数税率を前提で開発しているシステムなどは、ほとんどないでしょうから抜本的な仕様変更が必要となると考えられます。すると、現在のPOSレジの市場規模に近い金額が、消費税の軽減税率に対応するために動きそうです。 さらに、軽減税率の対象となる商品とならない商品を管理する必要があります。現在の案では品目ごと(すべての飲食料品から○○を除くといった考え方)で提示されているので、商品群ごとの管理で大丈夫かもしれませんが、将来的には個品ごとに管理することが必要になると思われます。 というのは、○○を除くという案であっても、加工食品を除くなど、線引きがきわめて難しいような案が出ているからです。そして、線引きが難しいという事は、結局は個品で管理しなければ対応できなくなるという可能性があるということですから、最初から個品管理を前提に考えていた方が、再度の仕様変更が発生しないだけ良いかもしれません。 なお余談ですが、米類や味噌醤油のみ軽減税率といった案も出ているようです。ただ、それなら米農家さんや醸造業者さんに直接補助金を支給して安く生産してもらった方が、事業者の事務負担が発生しない分だけよっぽどましだと考えられます。 また、インボイス(貨物の送り状、明細書)という問題も挙げられています。EUなどでは、インボイスを保存することが仕入控除の条件となるので、このような方式を用いた場合には、免税事業者(現行では売上高が1000万円以下の企業等の零細企業が主となる)はインボイスを発行できず、免税事業者からの仕入は結果として仕入控除を受けることが出来ないといった問題が発生します。 もちろん、課税事業者になる選択をすればこの問題は回避できるのですが、小規模事業者に追加的な事務負担を課すことになるので、いずれにしても負担は増えそうです。