「地方創生」日本が抱える課題と歴代政権の政策
安倍晋三首相が衆議院を解散したその日に、成立した法律があります。首相が臨時国会で重要課題と位置づけた「地方創生」に関連する2法です。この2つの法律は、人口減少と東京一極集中を是正するための大きな枠組を決めたものであり、具体的な戦略は総選挙後に策定されることになります。「自治体消滅」を警告するレポートが出されるなど、地方の現状は刻一刻と切実になっています。ここで改めて、地方再生に向けて乗り越えるべき課題について振り返ってみます。
「地方創生」のキモは
安部首相が重要課題とし、石破茂前幹事長を担当大臣に据えた地方創生。9月5日には「まち・ひと・しごと創生本部」事務局が発足し、12日には第一回会合が開かれました。以後、11月6日までに3回の会合がもたれ、11月21日には地方創生関連2法案「まち・ひと・しごと創生法案」と「地域再生法改正案」が可決・成立しました。 「まち・ひと・しごと創生本部」設置の趣旨が、総理官邸のHPにこう書かれています。 「人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、まち・ひと・しごと創生本部を設置しました」 つまり、地域創生のキモは人口問題の解決ということになります。時をさかのぼって5月8日。日本創生会議(増田寛也座長)が「2040年には20~39歳の女性の数が49.8%の市区町村で5割以上減り、約1800市町村のうち523自治体の人口が1万人未満となって消滅する」というレポートを発表しました。500以上の自治体が消滅するというインパクトは大きく、多くのメディアがこのレポートを報じました。 そして政府は「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との中長期目標を設けたのです。
人口問題の推計
一方、現状はどうでしょうか。 平成26年度版の「少子化社会対策白書」によると、これまでの出生率の推移は次のように書かれています(一部編集あり)。 「年間の出生数は、第1次ベビーブーム1期には約 270万人(合計特殊出生率4.3)、第2次ベビーブーム期には約 200万人(2.1)であったが、1975年に 200万人(2.0)を割り込み、それ以降、毎年減少し続けた。1984年には 150万人を割り込み、1989年にはそれまで最低であった 1966年(丙午:ひのえうま)の数値を下回る1.57を記録し、さらに、2005年には過去最低である 1.26まで落ち込んだ」 今後の人口推移については、国立社会保障・人口問題研究所が高位推計、中位推計、低位推計と3段階で試算しています。一般的に利用されるのは中位推計です。 ■中位推計(出生中位・死亡中位) ◎合計特殊出生率 2010年の実績値1.39から 2014年まで、概ね 1.39で推移。2030年の1.34を経て、2060年には1.35になると仮定 ◎総人口 2010年の1億2806万人から長期の人口減少過程に入り、2030年の1億1662万人を経て、2048年には1億人を割って9913万人となり、50年後の2060年には8674万人になる 現状では高位推計でも、まち・ひと・しごと創生本部が設けた「50年後(2060年代)に人口1億人程度を維持する」との中長期国家目標に届かないのです。