業務の現場が自ら動く--プロセスマイニングに取り組むアフラック
2024年1~3月に、CoEによる研修、Celonisの徹底理解、活用方法に関する議論といった地盤作りを進め、4~6月には施策の選定作業を実施。80件以上の案から早期実現を目指せる施策を選定。「業務効率化」「業務管理態勢の高度化」「業務リスクの低減」「事業費の適正化」を選び、7月以降、具体的な取り組みを開始した。 「業務の効率化」では、Celonisを活用してリアルタイムな業務モニタリングを実現した。業務状況を担当者が手入力で報告するなど、システム化できていない業務があったこと、それに伴い入力漏れや誤入力が発生しやすく、リスクの検知に遅れが生じるという課題もあった。そこで、データの連携頻度を高め、1時間に1回の割合で、Celonisに情報を流し、業務の状況を可視化できるようにし、業務状況報告の負荷を削減。異常値が発生した際にはアラートを発信するようにして、リスク管理を強化した。 また、「業務管理態勢の高度化」では、Celonisによって業務状況を可視化し、業務運営を改善する活動につなげたという。ここでは、曜日により業務の繁閑が発生していること、曜日による担当者の配置転換が難しく、業務滞留が発生していたことから、個人ごとの業務状況や生産性を可視化し、これを基に業務状況に応じた柔軟な人材の配置、空き時間の有効活用を進めたという。 「1時間ごとに個人の業務状況を確認したところ、急に作業量が増えていたり、何も手が動いていない時間が発生していたりすることが分かった。質問をしたかったが、質問できる人が周りにいないために調べていたとか、難しい案件に対応するためにマニュアルで検索を行い、それでも解決ができなかったことなどが原因だった。マニュアルを改訂したり、質問できる環境を作ったりすることで解決した」(山田氏)という。 この結果、残業時間の削減や滞留の改称、育成時間の創出、エンゲージメントの向上の成果が生まれたという。 Celonisの活用事例では、「タスクマイニング」と呼ぶ領域での活用例がグローバルで生まれ始めているが、この部分はタスクマイニングによる成果の一つだといえる。 同部では、半年間の活動を通じて、約2000万円の価値創出効果を想定。さらに、自らが主体となる変革への取り組みや、社外および部外の関係者との協業による成長機会の創出など、組織力や人材力の強化でも成果が上がっていることを強調した。 今回の取り組みが現場主導により短期間に成果を上げたことに関して山田氏は、「メンバーの課題感が前提となっており、そこにCelonisというツールが合致したこと、問題の所在や解決のアテについては、現場の経験や知見の方が、AIや専門家の分析より実用的であり、課題解決の優先順位づけが的確であったこと、現場で小さく試して、クイックに改善できるアジャイル手法とマッチしていること、約30人にユーザーIDを付与してCelonisの利用を促進するとともに、現場でアナリストを育成し、自走できる環境を整備したことが、成功の要諦だったといえる」と総括した。 一方で、アナリストの人材不足や、より広範囲でリアルタイムな情報連携を実現することで、現場での使用感を向上したり、セクションごとの運用差異の解消などに取り組んだりする必要があるという課題も指摘した。 「今後は、社員がCelonisを当然のように利用し、業務変革に利用する環境を創出したい。Celonisは優れたツールだが、使う人の動き方次第で成果が大きく変わる。2025年には、西日本保険金サービス部の部員全員にIDを付与するほか、アナリストの増員、活用領域の拡大を進める。また、他部を巻き込み、協業による変革を拡大したい」と述べた。 部門主導でのCelonisの導入において、CoEの活用やCelonisとの連携を推進したことや、タスクマイニングの手法を取り入れた改革を進めたことで、短期間で業務改革を実現した事例だといえる。