問題を解くのではなく問題を作りだすチームを――はやぶさ2総責任者のチームマネジメント
2020年12月、はやぶさ2は初代はやぶさに引き続き、小惑星往復探査に成功し歴史的快挙を成し遂げた。帰還から半年たったいま、はやぶさ2が持ち帰った星のかけらの本格的な分析が始まり、リュウグウそのものの成り立ちの解明や太陽系の歴史を紐解く新たな発見への期待が高まっている。 はやぶさ2のプロジェクトマネージャを務める津田雄一氏は、困難を乗り切るチーム作りのため、「いかに失敗を経験してもらうか」を重視したという。前人未踏のプロジェクトを成し遂げたリーダーは、一体どのようにしてチームをまとめあげたのか。はやぶさ2成功の裏にあるチームマネジメントの極意について話を伺いました。 (Yahoo!ニュースVoice)
はやぶさ、はやぶさ2の歴史的快挙「サンプルリターン」
――はやぶさ、はやぶさ2プロジェクトとはどのようなものだったのでしょうか。 2003年に打ち上げられたはやぶさは、小惑星イトカワへ行き、星のかけらを採って帰ってくるミッションでした。当時、小惑星往復探査ミッションを完遂した国は世界中どこにもなく、はやぶさには工学的実証ミッションの役割がありました。 はやぶさ計画が進んでいた当時、大学で宇宙工学を学んでいた私は惑星間飛行がいかに難しいことか理解していました。日本はすごいことをやろうとしているのだなと、興奮したものです。 はやぶさ2は初代の成果を受け、科学的に価値が高いと分かっている小惑星(C型小惑星)の1つであるリュウグウへ行き、星のかけらを採ってくるとともに、リュウグウの素性を様々な方法で調べるというミッション。狙った天体へ行き、サンプルリターンに成功した例は今のところ日本だけです。人類で初めて小惑星の地下物質の採取にも成功し、日本の探査技術の水準の高さを世界に示すことができました。 技術者としてはいったん大きな仕事をやり切りほっとしているところですが、科学者たちにとっては探査機が帰還したこれからが本番です。探査機が持ち帰ったデータや星のかけらの分析を進め、リュウグウの成り立ちや太陽系の歴史を紐解く鍵を見つけようと奮闘しています。 プロジェクトマネージャとしては、科学プロジェクトの成果を出してもらうことも背負っています。2022年3月ではやぶさ2の当初の計画は、一区切りです。チームの科学メンバーをけしかけながら、そこまでに良い成果をまとめ上げたいと思っています。 ――津田さんが、はやぶさ2のプロジェクトマネージャに就任した経緯を教えてください。 プロジェクトマネージャに就任する前、私はプロジェクトエンジニアとしてはやぶさ2に携わっていました。しかし、打ち上がってすぐプロジェクトマネージャに任命されたのです。 正直、参ったな、と思いました。 プロジェクトマネージャは、ミッションの全責任を負う立場です。オペレーション全体を把握し、技術、工学、科学といった各セクションの細かなところまで目を配らなければなりません。エンジニアとは違って、必ずしも技術的にベストを目指すことだけが役割ではなくなりました。大変大きな仕事をいただいたなと思いました。