民主主義を揺るがすフェイク情報~米国大統領選に見る影響力の実態~【調査情報デジタル】
さらに、拡散行動の調査でも興味深い結果が出た。フェイク情報を見聞きした人のうち、平均して17.3%が何らかの方法で拡散していたが、その拡散手段として最も多かったのは家族・友人知人との直接の会話だったのである。約半数が直接の会話で拡散していた。 つまり、SNSやネットニュースのコメント欄で聞いた情報を家族に話し、それがまたSNSに投稿されるといった、インターネットとリアルが連関する現象が起こっているのである。フェイク情報は情報空間全体の問題として考える必要がある。 ■生成AI時代の選挙とフェイク情報 AI技術の発展、そして生成AIの普及はディープフェイクの大衆化という現象をもたらしている。つまり、誰もが手軽にディープフェイクによって偽動画や偽画像を作成することが可能になった。 これは将来におけるフェイク情報の爆発的な増加を意味しており、私はこれを「Withフェイク2.0時代」という新たな局面に突入したと呼んでいる。この現象はすでに現れている。災害時の混乱を増幅させる投稿、政治的意図で発信された偽動画、ディープフェイクによる詐欺行為など、悪用例が増加している。 この大衆化という現象は、同時に世論工作の大衆化という現象ももたらしている。安価に、そして簡単に利用できる技術を活用して、個人やグループが社会や政治に影響を与える力を増大させているのである。 ある組織が、大量のアバターを作成してそれらにSNSアカウントを付与し、AIを使ってSNS投稿を自動生成・投稿して世論工作を展開するというビジネスを行っているという報道もあった。この手法はすでにいくつかの国の選挙で利用され、日本語での操作も確認されているようだ。 ■ディープフェイクと米国大統領選挙 今回の米国大統領選挙でも、明らかに政治的意図を持って発信された偽動画や偽画像が少なくない数拡散していた。例えば、ある候補が過去にひき逃げをしており、その被害者が話すインタビュー動画などだ。偽動画の中には大量のフォロワーを持つインフルエンサーが拡散し、1億回以上閲覧されるようなものも存在した。