親から相続を受けるときには自分も高齢者です。「老老相続」になるとどんな問題が起こりますか?
(4)数次相続の問題
高齢者の相続人もまた高齢者という場合、数次相続(被相続人が亡くなった後10年以内にその相続人に相続が発生する)となる可能性が高くなります。 相続税の支払いが必要な場合、申告・納付期限は自分が相続人であることを知ってから10ヶ月ですが、相続税がかからない場合、特に期限はありません。ただし、期限がないからといって、手続きをしないでいると次の相続時に手続きが複雑になる可能性があります。 最初の相続手続き(遺産分割協議や相続税の申告・納付手続き)が終わらないうちに次の相続が発生した場合、遺産分割協議に関係する法定相続人の数が増える可能性があります。相続人の数が増えると、話し合いが難しい、協議がまとまらないリスクも増すでしょう。 また、一次相続での遺産分割協議が終わらないと二次相続での被相続人の財産が確定せず、遺産分割協議が進められません。相続人を特定するための戸籍の収集も数が増え時間がかかります。 老齢夫婦が相次いで亡くなった場合には、二次相続では配偶者の税額軽減が受けられず、相続税が増える可能性もあります。
まとめ
相続が発生したとき、その後の手続きを進めるのは基本的には相続人です。ご自身が亡くなられたとき、あるいは親しい身内の方が亡くなられたとき、スムーズに手続きが進まないと相続人の間でもめごとになるリスクが高まります。 しかしながら、高齢化が進んだこの社会では、相続人も高齢ということも少なくありません。また、核家族化が進み、お子さまがいらっしゃっても離れて暮らしているケースが多くなっています。同居していれば、いろいろと話をする機会があるかしれませんが、離れて暮らしているとなかなか相続に関する話はしにくいものです。 相続は「人が亡くなるときの話」なので、ご本人も相続人となる人も「あまり考えたくない」と、話し合うことを避けてしまったり話を切り出しにくかったりということもあるでしょう。しかしながら、無策のまま相続が発生し、トラブルに発展してしまうケースは数多くあります。 ご自身の相続、あるいはご自身が相続人となる相続について、あらかじめの準備が大切です。いつかは必ず訪れるそのとき、「遺された人が困らないようにするためにできること」を考えるのは、すべての人に必要といえるでしょう。 出典 厚生労働省 令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 厚生労働省 令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税 執筆者:西山広高 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
ファイナンシャルフィールド編集部