オリックスMLB282発”大物”ジョーンズの”トリセツ”…さりげない敬意を示せる男が最初に気に入った日本語は「愛してる」
メジャー通算282本塁打のアダム・ジョーンズ(オリックス)が日本へ行ったことについて、驚きはない。1年ぐらい前から、代理人が売り込みをかけていた。 昨年の12月という早い段階で合意したことも驚きはない。昨年は3月に入ってからダイヤモンドバックスと契約を交わしたが、8月に35歳になる彼にとっては、さらに厳しい市場が予想されていた。 また昨年、日本のチームに対してアプローチをかけたときには、遅すぎた。日本はキャンプ開始も早いが、ロースターを固めるのも早い。メジャーの反応を待ってからでは、手遅れになる。代理人もその辺の事情を学んだはずである。 ただ、本当に受け入れる球団があったことには、少々驚いた。 例えるならジョーンズは、いろいろとメンテナンスが必要な古い高級外車。維持費も安くはない。ポテンシャルはあるが、その性能を引き出すにはそれなりの手間がかかる。開幕を控えた、日本の直近の練習試合での数字は、14打数でノーヒットだったそうだが、まだ、その性能を発揮することはできていないのだろう。 マリナーズがジョーンズをドラフトで指名したのは2003年のこと。メジャーに昇格したのが2006年で、まだ二十歳だった。当時の彼をどう表現したらいいか難しいが、少なくとも金のネックレスをジャラジャラ首から下げて、というタイプではなかった。話しかけるとき、相手がベテランだろうが、スター選手だろうが、物怖じしない。イチローに話しかけるのも、日本人メディアに話しかけるのも、まったく同じ調子。覚えたての日本語を盛んに使いたがった。 「オハヨ」 「オスッ」 一番気に入ったというフレーズが、「アイシテル」。いつ使うんだろう? と思っていたが、今ついにそのときがやってきたのかもしれない。 天の邪鬼でもある。 話を聞かせてもらっていい? と聞く。ロッカーで暇そうにしていても、十中八九、「忙しい」と返ってくる。 あきらめると、しばらくして話しかけてくる。 「何時から?」 そのインタビューで例えば、オフは何をしてるの? と聞く。 「オフはハンティングに行ったりすることが好きだ、というプライベートなことは話さない」 球場の通路などで1、2年ぶりに会って、「久しぶり!」と声をかけても、「ヨォ、久しぶり!」という返事が返ってくることはない。そのくせ、クラブハウスにいると「イチローは元気?」なんて話しかけてくる。ちゃんと覚えている。 一事が万事、そんな調子だから、慣れるまで時間がかかる。