サメとビーチをシェアするには、「サメ予報」の実現へ進む研究、米でホホジロザメ目撃増加
人間もサメも安全に過ごすために
米国北東部の海岸で近年、ホホジロザメの目撃件数が増えている。餌となるハイイロアザラシに引き寄せられて、この海域に集まってくるためだ。ハイイロアザラシは、1972年に米国の海洋哺乳類保護法によって狩りが禁止されて以来、東海岸で数が回復している。 ギャラリー:マイアミ沖の浅瀬に現れたサメの大群 米フロリダ自然史博物館が運営するデータベース「インターナショナル・シャーク・アタック・ファイル」のデータによると、サメの獲物が回復したことに加え、ビーチに遊びに行く観光客が増えたこともあって、1970年以降、サメにかまれる事故が世界的に少しずつ増えてきたという。しかしごく最近では、その件数が減少傾向にあるようにも見える。 2018年には、サメに脅威を与えていないにもかかわらずかまれた件数が世界的に66件報告されていたが、2020年には57件に減っていた。そのうち10件は死亡事故だった。サメによる死亡事故の平均は年に4件だが、2020年だけ特に多かったのはおそらく例外だろうと、専門家は考えている。 サメに遭遇する確率は極めて低い。遭遇したとしても、サメが人間をアザラシなどの獲物と勘違いしない限り、かまれることはめったにない。サメの餌場となる場所で泳いでいると、リスクが高くなる。 オーストラリア、シドニー大学で一般の人々のサメに対する認識を研究する社会科学者のクリストファー・ペピン・ネフ氏によると、海岸近くで人間とアザラシ、ホホジロザメが密集して泳いでいるような場所は、世界でも米国マサチューセッツ州のケープコッドと南アフリカのケープタウンだけだという。 ちなみに、人がサメにかまれると大きなニュースになるが、大半の場合、脅威を与えていないのに人間をかむサメは、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種だけだ。
怖いイメージを払拭
以前は無慈悲な殺人者というイメージが強かったが、最近の研究のおかげで、サメは長い場合で400年も生き、友好関係を築くこともできる動物であることが知られるようになっている。また、海の生態系を保つために重要な役割を果たしていることもわかっている。 サメの研究者や教育者は、サメの行動について人々に知ってもらうために努力している。これに対する反応は、おおむね良好なようだ。一部の研究者は「サメに襲われる」という言い方ではなく、「サメにかまれる」、もしくは「サメと遭遇する」などと表現を変えた方がいいのではとさえ提案している。 サメに遭遇しても、必ずしもけがを負うわけではない。海底にすむ小さなサメを誤って踏んでしまうなど、3分の1のケースは無傷で済んでいる。 ケープコッドにある博物館「大西洋サメセンター」では、2016年の開館以来、年間の来館者数が毎年約3000人ずつ増えているという(コロナ禍が始まった2020年を除く)。博物館を運営する大西洋ホホジロザメ保護協会の教育担当者であるマリアン・ロング氏は、「最もよく聞かれるのが、『サメを見るにはどこのビーチに行くべきですか』という質問です」という。 サメのことをもっとよく知ってもらい、人々の好奇心をかき立てることこそ、リスクを伝え、人間とサメが安全に海を共有するために必要なことだと、専門家は言う。