独りって、そりゃ寂しいですよ――「何をやらせても、人よりできなかった」パティシエ・鎧塚俊彦の実像
ケーキって、手間と時間がかかりますから、利益がものすごく少ないんですよ
インスタグラムでは、プライベートなシーンに加え、鎧塚が取り組む活動、折々のニュースに対する私見など、さまざまなトピックスを公開。最近は日本の農業・酪農の問題について、ストレートに疑問を呈し、話題にもなった。 「何か違うと思ったことは、自分なりに声を上げなければ。亡くなった坂本龍一さんは、環境問題や反戦運動など、いろんな活動をされてましたね。いろんな意見がありますけど、坂本さんの思いは、すべて音楽に反映されていたんだと思うんです。僕にとっても、お菓子はものすごく大切なもの。視野を広く持って、いろんな経験をして、でもそれがおいしいお菓子を作ることにつながらないと意味がないですから」 鎧塚には、「お菓子の世界から、アジアを一つに」という目標がある。少子化が進み、働き手が減る日本において、アジアの人材がますます必要になる、と語る。
「僕らは昔、お菓子といえばフランスを見てました。でも、アジアの人は今、日本を見ているんですよ。日本のお菓子は進んでいる、と。日本に優位性のあるうちが、一つになっていくチャンスだと思うんです。ベトナム、インドネシア、アジアの人たちを広く招いて、一緒に働いていく。外国人が増えると治安が悪くなるという人もいますけど、ならばどうしたらいいのかを考えた方がいい。門戸を広げて、可能性を見つけていきたい」 一時は、「新しいもの」「珍しいもの」を求めてスイーツを考えていたことがあった。しかし今、鎧塚が目指すスイーツは、シンプルに「おいしい」ものだ。 「素材のフルーツも、ブランドにとらわれず、安くておいしいものを探すのが昔からの習性です。僕のケーキは、大きさからも、店の立地で考えても、安いと思います。仲間内からはもっと値段を上げてくれと言われるくらい。ケーキって、手間と時間がかかりますから、利益がものすごく少ないんですよ。そのなかで、スタッフの生活と、彼らの職人気質を守っていくためにも、働き方改革をしっかりやっていくのが僕の仕事でもあります」