【オールカマー回顧】「勝利への一本道」見逃さなかったレーベンスティール 着差以上に価値ある内容で勝負の秋へ弾み
熱くならざるを得ない「母父トウカイテイオー」という文字列
ところが、ゴールに飛び込む寸前、馬群をさばいたレーベンスティールが襲いかかる。 こちらはアウスヴァールの背後、インの3~4番手にいた。しかし、アウスヴァールの巧みな逃げにより各馬十分に余力を残す状況とあっては、脚があっても進路がない。急坂までは危険な状況にあったが、リカンカブールが少し外に動き、生じた勝利への一本道を見逃しはしなかった。 そこを抜けてから、ゴールまでの瞬発力は圧巻のひとこと。アウスヴァールと田辺騎手の幻惑戦法を打ち破ったことも、レーベンスティールの価値を示す。勝ちに行く地力がついたいま、目指すはてっぺんただひとつだ。 母の父トウカイテイオー。この文字を目にするだけで熱くなるファンは数多い。まさか令和の世にトウカイテイオーの名が轟くとは。やはりどうしたってGⅠを獲ってほしい。肩入れせずにはいられまい。 2着アウスヴァールは実に完璧な運びだった。直線半ば、リカンカブールとの脚色を比べれば、勝利は決定的だった。 ここまで運べれば、勝ちたかった。そのひと言に尽きる。相手が悪かった。道中で力んで強気に行きすぎるきらいもあったが、今回はそういった面もなく、今後も同じようなレース運びができれば、重賞は近いだろう。 だが、強い逃げ馬は必ずマークを受ける運命にある。さすがにオールカマー2着でターゲットにされるので、今後は真価が問われる。 3着リカンカブールは、そもそも中山金杯の勝ち馬。大阪杯大敗後は脚部不安で休養していたが、休み明けの函館記念を叩き、型通り上昇した。その手ごたえがあったからこそ、今回は馬場を踏まえ積極的なレース運びに出た。 中山向きの立ち回りと速い時計への対応力が備わっており、今後も内回り2000m前後では期待したい。なかなか順調にレースを使えない面があり、5歳でもキャリアはまだ13戦。伸びしろにかけよう。 3番人気サヴォーナは4着。上位が逃げ、好位勢だったことを踏まえると、ちょっと物足りない。 2400m以上の長めの距離に実績があり、函館記念も4着。もう少し序盤でゆったり進める距離で先行し、地力勝負に持ち込む形がベストだろう。アルゼンチン共和国杯あたりで面白い。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳