名スコアラーが分析! 広島の快進撃を支える黒田&新井の有形無形の力
広島の勢いが止まらない。後半戦も中日、阪神に続けて2勝1敗で勝ち越し、貯金は「21」。2位の巨人に10ゲーム差をつけ、“最強”と言われたソフトバンクよりも2位に大差をつけて優勝へ向け独走状態だ。 チーム防御率の3.33、チーム打率の.274など、いずれの部門もほとんどリーグ1位の成績。強いていえば、救援防御率が3.18で中日の2.88を下回り、得点圏打率が.274で横浜DeNAの.277に負け、代打の成功率が横浜DeNA、ヤクルトを下回っているくらいである。今回、元侍ジャパンのチーフスコアラー、阪神のチーフスコアラーとしてデータ野球を支えてきた三宅博氏に、広島の強さを分析してもらったが、そこには意外な強さの秘密が見えてきた。 まず広島快進撃の象徴とも言える、打率、本塁打、得点と、いずれもリーグトップの打線について、スコアラー目線で分析してもらうと、三宅氏は、「ボール球を振らなくなった見極めの良さ」が目立つという。 「スライダー、フォークという落ちる変化球に対しての見極めが非常によくできている。追い込まれると、そういうボールを意識しているようだが、逆にストレートが来て逆をつかれても、バットスイングの速いバッターが多いのでファウルで粘りながら甘いボールを待てる。 その代表格がベテランの新井だろう。センターからライトへ打ち返すという意識があって、これまでは、対角線に攻めていれば、攻略が簡単だったバッターだが、その配球にひっかからなくなっている。いわゆるトップの位置が決まっていて、バッティングに間がある。 その新井に他の若い打者も右に倣えをしているように見える。田中や、鈴木誠也がそうだ。おそらく、それを可能にしているのが、練習量の裏づけだろう。総じてバットスイングが速い。振り込んでいる証拠。バットスイングが速いと必然、ポイントが手前になるし、ボールの見極めができるようになる」 セイバーメトリクスで「ISOD」と言われる安打以外での出塁率で「選球眼」の指標となる数値があるが、新井貴浩(39)は、昨年の0.07から0.08と数値がアップしている。また打率がアップしているのに、ストライクゾーンのスイング率が下がっていて、これは狙ったボールを打ち損じていないことを示している。 田中広輔(22)の「ISOD」も、昨年の0.05から0.11へ、“神っている男”、鈴木誠也(21)も、0.05から0.06へ改善していて、三宅氏が指摘する「ボール球を振らない」という特徴をデータが示している。 先日、史上2人目となる日米通算200勝を成し遂げた黒田博樹(41)が、その会見で「新井がこのチームを引っ張ってくれているからチーム状態がいい。彼がいないと、現時点でこの状態にいられるのかな? とは思う」と語ったが、新井のバッティングスタイルが、チーム全体に大きな影響を与えているのだ。 また広島は、今季から打撃コーチを増やした。石井琢朗、東出輝裕、迎祐一郎の3人体制で若手をケア、特に「ボール球を振らない」バッティングを徹底したという。それらの指導体制の効果も見逃せない。 そこにリーグトップの81盗塁、犠打成功率が.833という、他チームからすれば、“嫌らしい機動力”が絡んで打線がつながる。三宅氏は「カウントによっては、必ず自動スタートを切るなど、機動力の使い方が徹底していて、タッチアップも含め、ひとつ前の塁を落とす走塁に隙がない」とも言う。