遺伝子を「シュレッダーで破壊」!?…ノーベル賞科学者・山中伸弥が語る、ゲノム解読の意外過ぎる「ウラ側」
「ジャンクなDNAにこそメッセージがある」
羽生30億の塩基配列に、ある種の法則性や規則性みたいなものはないんですか。 山中基本的には、みんな一緒なんですよ。僕と羽生さんの配列は99・99パーセントくらい一緒なので、そのテンプレートがあれば、それに貼り付けていったらいいんです。過去にジャンク配列と言われたところは、同じような文字がつながっていたりするんです。アイウ・アイウ・アイウ・アイウ・アイウとか。それをバラバラにされてしまうと、同じようなところがいっぱいあるので、どこに貼り付けていいかは実はなかなか難しいところもあるんです。 それが本当にジャンクならば、別にそこを読まなくてもいいわけですが、先ほど言ったように、今はそのジャンクと言われたところに実はすごく大事なメッセージが隠されていることがわかってきたので、そこまできちんと読まなければ間違った判断をしてしまいます。
「ゲノムという設計図」から読み取れるものとは?
山中たとえば、僕と羽生さんの塩基配列はほとんど一緒なんですが、少しだけ違うところがあるんですね。あるところは、羽生さんはAなのに、僕はGになっている。その違いの多くは、あまり意味がありません。 羽生あまり意味がない。なるほど。 山中ですが、その一部に背の高さや知能、病気になりやすさとか薬への反応具合などにつながる違いが入っているんです。人間それぞれの個性は、ゲノムという設計図だけで説明できるところと、その後の環境によるところがあります。 羽生後天的な影響ですね。 山中後天的なところは、いくらゲノムを読んでもわかりませんが、設計図のほうはゲノムを読めばわかります。今、その文字の意味づけをする作業が世界中で進められています。昔はこんなことはやりたくてもできませんでした。今はゲノムを読めるようにはなったのですけれど、まぁなかなか難儀な作業ですよ。 『「健康な人間」を「作れてしまう」ゲノム編集…天才科学者・山中伸弥が恐れる「深刻すぎる」未来』に続く
山中 伸弥、羽生 善治