「僕はセレモニーをしてもらうまでの選手になれなかった」大田泰示は静かにDeNAを去って…古巣コーチ就任へ「泥臭くやってこられたのが財産」
「意外と落ち込んでないんだねって」
想いを伝えることも、聞く耳を持つこともできる選手だった。だからきっといい指導者になるのではないかと感じてならない。なにより大田自身が新しい職場にワクワクしている様子が伝わってくる。 「はい、結構楽しみなんですよ。心配してくれた家族や親戚、古い友人たちに会うと、意外と落ち込んでないんだねって言われるんです。そういう意味ではきちんと次に向かえているんだなって思います。頭の中で想像するばかりですけど、ワクワクしかないんですよ。きっと壁にぶつかるでしょうが、それも楽しみながらやれたらと思っています」 引退をしても大田泰示は、大田泰示のままだ。野球大好き人間の大田が、どんな野球キッズたちを育てるのか楽しみだ。 「プロを目指す子どもたちもいれば、これから始める子たちもいるでしょうから、とにかく野球の面白さを伝え、そして興味を持ってもらえるように活動していきたいですね。そしていつかプロになれなかったとしても、野球で人生が救われましたとか、生きていく上で野球をやってきて良かったっていう人を増やせればいいかなって思っているので、まずは地道にやっていきます」
なぜ横浜でセレモニーをしなかったのか
野球を愛し、野球に愛された男は、実感を込めてそう言った。 新しい門出はめでたいことではあるが、まだ引退から日も浅いこともあり、どこか寂しさもつきまとう。思うのは、最後にハマスタでファンの前に姿を見せて欲しかったということだ。ただ、引退セレモニーの機会は望めばあっただろうが、そうしなかったのも大田の美学だった。 「やっぱり自分の勝手な固定観念として、一流でありずっとレギュラーを張った選手がセレモニーをしてもらうものだと。そういった意味では、僕は何年もレギュラーだったわけでもないし、ベイスターズに拾ってもらってプレーしてきた身なので、頑張ってきたけどそこまでの選手じゃない。最後にファンの方々の前で挨拶をさせてもらえれば、ハマスタの演出はすごいでしょうし、いい思い出の1ページになるとは思うんですけど、自分はそこまでの選手になれなかった自覚があるので……」 そんなことないですよ、と言おうと思ったが、プライドを持って懸命に日々生きてきた人間に、とやかく言えることではないと言葉を飲み込んだ。
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