「かわいそう」だから…「がんで死んだウサギ」で知る主人の間違った愛情 「ニンジンが好物」「かよわい」の誤解が招く悲劇
動物の死に直面したとき、飼い主さんや動物園・水族館の飼育員さんたちは、「なぜ死んでしまったのだろう」「なぜ不調に気づいてあげられなかったのだろう」「もっとできることはあったのではないか」といった複雑な思いを感じるものです。 大事なことは、ウサギにかぎらず、ペットを飼っているなら定期的に動物病院にかかり、獣医師による健康チェックを受けるということです。 それでも不幸にして動物が亡くなってしまった場合、ぼくの行っている病理解剖は、その動物の死に遺された数々の「なぜ」の答えを探します。言葉を発しなくても、死んだ動物の体の中には、彼らが必死に生きた証しとなる「メッセージ」が込められているのです。
病理解剖をすることで、その動物がどのような理由で亡くなったか、そのプロセスを知ることができます。 突然死んでしまったウサギも、病理解剖によって、「飼い主さんが気づかないうちに子宮がんができていて、それが全身の臓器に転移しており、そんな素振りは見せなかったけれど、すいぶんと苦しかったはず」――ということが判明することもあります。 ■教訓が後の動物を生かす 家族同然だったペットの死を受け入れるのはつらいことですが、せめて死の原因がわかれば、飼い主さんがペットの死を理解し、死に納得する助けとなります。
死の原因を理解・納得したら、それをきちんと教訓としたうえで、後の動物たちと接してあげてほしいと思います。
中村 進一 :獣医師、獣医病理学専門家/大谷 智通 :サイエンスライター、書籍編集者