保育所も公園も足りない 悩める東京中央区の“立体都市公園”という試み
待機児童の解消は、どこの自治体でも頭の痛い問題です。特に、東京都では、先の都知事選でも待機児童問題は争点のひとつになりました。 まるで『ラピュタ』? 首都高速の上を活用した目黒区の「天空公園」 10月1日から、都は都議会議事堂1階に保育所“とちょう保育園”を開所します。同保育園は都庁の目の前という好立地で、定員48名のうち半分の24名は新宿区民を対象にした地域枠、残り24名は新宿近隣の企業で働く従業員枠となっています。小池百合子都知事は“とちょう保育園”を待機児童解消のシンボル的に位置付けています。
広い都立公園で進む国家戦略特区を使った公園内保育所開設の動き
職場の近くに保育所があることは、もし子供が体調を崩しても職場からすぐに駆けつけられますし、退勤後にすぐに迎えに行くことも可能です。お父さん・お母さんにとっては心強いことでしょう。都心部はオフィスビルがひしめき、保育園を設置するようなスペースの余裕はありません。“とちょう保育園”は、かなりのレアケースといえます。 政府は待機児童問題を早急に解消するべく、国家戦略特区で規制緩和を進めました。これにより、公園内にも保育所の設置ができるようになったのです。国家戦略特区によって、荒川区の汐入公園や渋谷区の代々木公園などでは、早くも公園内に保育所を開設する動きが見られます。両公園とも、来年4月には保育所が開所です。 敷地面積の広い都立公園を有する区は、国家戦略特区の規制緩和による恩恵を受けられます。その一方で、日本随一の繁華街・銀座を擁する中央区は、区内に都立公園が浜離宮恩賜庭園しかありません。浜離宮恩賜庭園は条例で公園に定められていますが、その名前からもわかるように江戸情緒を残した庭園として多くの観光客が訪れるスポットです。一般的な都立公園とは趣が異なるので、庭園内に保育所を設置することが難しいのです。そうした事情も踏まえて、中央区は立体都市公園制度を活用して、区立公園内に保育所の開設を進めています。
中央区は銀座の真ん中、小さな区立公園で準備
立体都市公園制度は、2004(平成16)年に都市公園法が改正されたことで新たに創設された制度です。従来、公園は建物の上部につくることができませんでした。それでは土地を有効活用できません。立体都市公園制度が創設されることによって、土地を有効活用できるようになったのです。目黒区の天空庭園や神奈川県横浜市のアメリカ山公園などは、立体都市公園制度を活用することで生まれた公園です。 中央区が2019年4月をメドに保育園の開設を検討している水谷橋公園は、銀座の真ん中にあります。水谷橋公園は敷地面積が約720平方メートルしかない小さな公園です。荒川区汐入公園の面積は約12万6000平方メートル、渋谷区代々木公園は約54万平方メートル。保育所の開設が進められている、これらの公園と比べてみても水谷橋公園は明らかに小さいことがわかります。 そんな狭小な区立公園内に、保育所をつくることは可能なのでしょうか? 中央区環境土木課水とみどりの課の担当者は、こう説明します。 「確かに水谷橋公園は決して大きいとは言えません。そうした事情から、中央区は立体都市公園制度を活用し、一階に保育所を建設し、上階部分を公園にする計画を進めています」。 立体都市公園制度を活用することで、水谷橋公園に整備されることになった保育所ですが、まだクリアしなければならない課題があります。それが、園庭の問題です。保育所には園児が遊ぶ園庭が欠かせません。水谷橋公園は近隣オフィスのビジネスマンがタバコを吸いに来たり、OLがお弁当を広げに来たりする公園のため、ベンチは設置されていますが、遊具類はひとつもないのです。 「保育所の上部につくられる公園は、一般の公園としても保育所の園庭としても利用されますので、当然ながら公園に遊具は設置する予定です。ただし、これまで利用していた近隣の方々を排除しないような配慮も検討することになるでしょう」(同)。