温泉&ビール、被災地に日常~異色の施設「輪島カブーレ」
温泉にビール…被災地の灯台のような施設「輪島カブーレ」の復興戦略
石川・輪島市。 2024年元日の能登半島地震から半年近く経っても、朝市通りの倒壊した建物はそのままで、開いている店もまだ少ない。 【動画】温泉&ビール、被災地に日常~異色の施設「輪島カブーレ」
そんな中、人でにぎわう場所がある。 地下1200mからくみ上げている天然温泉がある2018年オープンの「輪島カブーレ」。
被災地にもかかわらずにぎわっている理由は、1杯400円のクラフトビールや揚げたての天ぷら……カウンターでは、「風呂上がりに一杯」という人たちが肩を並べる。
スポーツジムまであり、地域の人は誰でも利用できる。 「輪島カブーレ」を運営しているのは社会福祉法人・佛子園(ぶっしえん)。実はここは障害者の就労施設で、約50人の障害のある人たちが働いている。
接客担当の沖泙(おきなぎ)恵理加には軽度の知的障害がある。まじめで丁寧だ。覚えた仕事は確実にこなし、ビールのつぎ方にもこだわりがある。
さらにここは高齢者が日中、介護を受けるデイサービス施設でもある。 福祉施設でありながら、温泉や食事処を地域住民に開放することで人々が自然に交流する。そんな「ごちゃまぜ」の場所に年間23万人が訪れる。 「輪島カブーレ」も地震で被害を受けた。スタッフも全員が被災した。だが、施設長の寺田誠を先頭に、一日も早い復旧に力を尽くした。 「被災をして避難所で生活をされている方々は非日常。日常を感じられる場所で、少しでもリラックスしてほしかったんです」(寺田) 「輪島カブーレ」に来ている人の多くが被災者。自宅に住めなくなった人たちにとっても、ここはよりどころになっている。その一人、高木雅啓さんは、「本当に灯台みたいな感じでした。暗い世界の中で、カブーレという組織が機能をどんどん住民のために回復して」と言う。
運営母体である佛子園の本部は、能登とは離れた白山市にあり、大きな被害は受けなかった。地震の2日後には、本部や他の施設から水や食料、物資の運搬を開始。 11日後には、まだ水道が通っていない中で温泉を再開した。