温泉&ビール、被災地に日常~異色の施設「輪島カブーレ」
支援物資の中には海外でも賞を取った佛子園オリジナルのクラフトビールもあった。被災地でのアルコールは不謹慎だという声もあったが、佛子園理事長・雄谷良成(62)は、こんな状態だからこそアルコールも出すべきだ、と言い切る。 「そういう時に僕らがやらないとダメでしょう。絶対必要になるんですよ。避難所で飲めないので、隠れて飲んだりすることになる」(雄谷)
「ごちゃまぜ」福祉施設で全国から注目~その手法を復興支援にも
雄谷は福祉業界に革命を起こしてきた人物だ。作ってきたのは従来の枠組みを超えた福祉施設。障害者も高齢者も地域住民もみんなが集まり交流する場にして、町全体を元気にしてきた。その取り組みが注目を集め、佛子園が運営する16の施設には、視察団など年間約150万人が訪れている。 2016年には「カンブリア宮殿」に登場し、掲げる「ごちゃまぜ」の必要性を説いた。 「高齢者は高齢者だけとか、障害者は障害者だけ、子どもたちは子どもたちだけということが思わしくない環境なのではないかと思っていたので、いろいろな人と関われる環境をつくろうと」(雄谷) 佛子園は、寺の住職だった雄谷の祖父が、戦災孤児や障害児などを預かり1960年に創設。雄谷は障害のある人たちと一緒に育った。 25歳の時、途上国支援のため、青年海外協力隊員としてドミニカ共和国に赴任。貧しいながらも人々がつながり合って生きる姿に「ごちゃまぜ」の原点を見たという。帰国後、34歳で佛子園の仕事を始めた。 雄谷は今、「ごちゃまぜ」で地域を元気にしてきた手法で復興支援に取り組んでいる。 この日訪ねたのは、「サクラ醤油」で知られる輪島市の老舗「谷川醸造」の醤油蔵。築100年以上の蔵は今回の地震で全壊した。
最大震度7の揺れに襲われた輪島市では8000棟以上の住宅が全半壊。多くの人が住まいや仕事を失った。この蔵も再建を模索中だが、代々受け継いできた木桶は、使えるかどうかわからない。 「谷川醸造」社長・谷川貴昭さんに「ちょっと悪巧みをしますか」と、動き出した雄谷。三味線通りに屋台村を作るという。入るのは店を失った市内の飲食店だ。コストも人手も少なく済む屋台を再建の第一歩にしてもらおうと考えたのだ。 「関東大震災や空襲で焼け野原になった時も、闇市とか屋台から復興してそこから元気をつけている。みなさんが廃業する前に、ここからもう一度やるぞ、と」(雄谷) 松野克樹さんは、三味線通り近くで60年続く「美喜寿司」の二代目。震災前は地元客や観光客でにぎわう店だったが、店は全壊と判定された。再建の見通しが立たない中、屋台村の構想を聞き、希望を感じたという。 「いい話だなと。参加する人も協力して成功できるといいですよね」(松野さん)