温泉&ビール、被災地に日常~異色の施設「輪島カブーレ」
〇佛子園流の復興支援3~仮設に「ごちゃまぜ」の場を 仮設での生活は長期化が予想される。「そこに欠けているものがある」と雄谷は言う。懸念するのは、いわゆる災害関連死の発生だ。仮設でこもりきりになり、体調の悪化に気づかれないまま、一人で亡くなってしまう高齢者もいる。 熊本地震では、直接、地震で亡くなった人よりも災害関連死のほうが4倍も多かった。能登半島地震ではすでに30人が災害関連死と認定されている。 それを防ぐのに有効だと雄谷が考えたのが、「コミュニティーセンター」。仮設のある一角に、銭湯や食堂が入った、みんなが集まれる場所を作ろうという。 「まさに『輪島カブーレ』のミニ版。『輪島カブーレ』では、皆さんお風呂から上がってきていろいろなお話をすると、それですごく元気になる」(雄谷)
仮設の住民からも「そういうのはすごく必要だと思います。そこからまた知り合いが増えていく」とも声があがった。自然と「ごちゃまぜ」になれる場所を作り、人と人のつながりが生まれるようにする。それが孤立を防ぎ、命を守ることになる。
「ごちゃまぜ」で町を活性化~地域の「熱」を生む方法
島鳥取・南部町。人口約1万200人の豊かな里山の町だが、この20年で人口が約2割減り、活気がなくなっていた。そんな町に2022年オープンした「法勝寺温泉」は、佛子園流で問題の解決を図っている。 前町長の坂本昭文さんは、雄谷の進める「ごちゃまぜ」が町を活性化させるよりどころになると考えたという。 「施設を作っただけでは回りません。施設を作るには理念が必要です。『ごちゃまぜ』の考え方で熱を出せば、必ず熱のあるところには人が寄ってくる。人が寄ってくれば、やはり活気が湧く」(坂本さん) 人が寄ってくる、南部町の「ごちゃまぜ」施設。一番人気はやはり温泉だ。 地下1200メートルから湧き出る温泉はとろみがあり、肌がつるつるになると評判だ。 料金は大人450円だが、ここで週に1回ボランティアをすると、働いた疲れを癒すという名目で温泉に無料で入れる仕組みもある。 佛子園同様、ここでも障害のある人たちが約30人働いている。そのうちの一人、西康弘さんは、働くことで以前より元気に過ごせるようになったという。 「まだ慣れないところがあり、きついですけど楽しいですね」(西さん) ここには毎日のように、町の高齢者から子どもまで、がやがやと集まってくる。 大人たちは風呂上がりにビール。その横で子どもたちが静かに宿題。まるで町のリビングだ。 学童保育なども運営している。こうした取り組みによって子育て世代が移住、町に少しずつ、活気が戻ってきたという。