じつは知らない、日本が「患者不足」に陥る「意外すぎる未来」
2030年頃に「患者不足」が起こる
もちろん、各地域における個別の医師不足事情には耳を傾けなくてはならないが、日本全体として考えると、人口減少下で医師の養成数をこれまでのペースで増やし続けることは難しい。総人口の減少とともに患者数が減っていくからだ。こうした現実を無視して医師の養成数だけを増やし続けたならば、需給バランスは大きく崩れる。 医療現場に立つ医師を養成するのには長い年数がかかるため、タイムラグが生じてうまく調整できないのだ。 患者が多いときには養成が間に合わずに「医師不足」が続き、ようやく医師数が増えた頃には人口減少で患者も減り、「医師過剰」というよりも「患者不足」になっているのである。 目の前で起きている医師の偏在をすべて解消してから「医学部入学定員の削減」をスタートさせていたのでは「患者不足」状況はより酷くなる。そもそも地域偏在や診療科偏在を医師養成数の拡大のみで解決しようとすることには無理があるのだ。 日本全体で見ると「患者不足」に転じるタイミングはそんなに遠くない。 厚生労働省の資料によれば、2024年度から開始予定の医師の働き方改革(時間外労働の年間上限原則960時間)に合わせて労働時間を週60時間程度に制限するなど業務の見直しをした場合には2029年頃に約36万人で、週55時間程度とした場合でも2032年頃に約36万6000人で需給が均衡し、その後は医師が過剰となる。 「患者不足」は地方圏ほど早く訪れる。2025年から2040年にかけて21県で65歳以上人口が減る。75歳以上人口の減少は17府県だ。 厚労省は「患者不足」時代の到来を裏付けるデータも公表しているが、入院患者数は高齢人口が最高値に近づく2040年にピークを迎える。 入院患者数を高齢人口の医療圏別に見ると2020年までに89ヵ所の二次医療圏でピークを迎えたと見込まれ、2035年までに260ヵ所でピークとなる。 外来患者についてはすでに減少している医療圏が多く、2020年までに214ヵ所でピークを迎えた。全国で計算しても2025年にピークとなる。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)