シニア社会時代の逆タイムマシン経営
4月15日にForbesコラム『「人口オーナス時代」の輸出産業はこれだ!』でも紹介した通り、今後いちはやくシニア社会にはいっていく日本発の産業を提案・提示していける可能性が大きくなっています。過去を振り返って「失われた30年」という言葉をたびたび聞くようになり、日本社会・日本経済の復興を願う声も少なくないなか、新たな産業・事業を産み出し世界に提案しない限り、この状況は改善しないどころか、悪くなる一方でしょう。ただし、外部競争環境も我々自身の社会資産・技術資産・人的資産も大きく変わってきているため、過去と同じことをやっても成功は保証されておらず、新たな価値創造を考え、実行していく事が求められているのです。 内閣府の統計予測では、いまからわずか6年後の2030年には65歳以上の人口比率が31%となるとされています。ほぼ3人に1人の日本国民がいわゆる前期高齢者(65歳~74歳)と後期高齢者(75歳以上)になっている事になります。昭和のアニメとして知らない人はいない「サザエさん」の登場人物で磯野家の父親である「磯野波平」さんの設定年齢が54歳と知ると、現代の54歳とはずいぶん違う印象だと思います。 寿命が延びた事もあり、かつての年齢よりも10~15歳くらいは若い感じがするのではないでしょうか? 個人差はあるものの、かつての定年年齢以後も働く事ができる人は多く、実際総務省統計局のデータでは、2021年に65歳から69歳の就業率は50%を超えています。そして日本においては、この就業率は年々伸びており、既に二人に一人の方が就業されている状況になっています。 つまり、かつて多くの企業での定年と言われた60歳も65歳や70歳へ移行する企業も増え、シニア人材を戦力として活用し、貢献して貰う企業が増えています。しかしながら、それだけでは日本社会がかつての隆盛を取り戻すことは容易ではないとみています。 1990年半ばから後半には、Google、Amazonといった会社がインターネットを活用した事業を開始し、2000年代には、Facebook(現 Meta)が設立され、Appleが iPhoneを投入し、現在の皆さんの生活に不可欠なプロダクトやサービスが登場しました。 インターネットビジネス創成期の頃、タイムマシン経営という言葉が流行していました。ちょうど1990年代後半からネットバブル崩壊後の2000年前半くらいに持て囃されていました。このタイムマシン経営は海外でうまくいったビジネスやビジネスモデルを日本へ「輸入」する事で成功率を高めるというものでした。米国Yahoo!を日本へ持ち込んだ例などはその典型例と言えるでしょう。 しかし、このタイムマシン経営は情報格差、情報伝達の時間差をうまく活用して事業の成功に結び付けたものですが、今や情報はあっという間に世界中を駆け巡り、情報格差や情報伝達の時間差は縮小してゆきました。もちろん一定のコミュニティにしか回らない情報もあるのは事実ですが、一般の人がアクセスする情報という意味では世界はとても小さくなりました。 またインターネットを活用した多くの日本企業が海外、特に米国への事業展開を試みるもその多くは海外市場での事業縮小、撤退といった結果となりました。