シニア社会時代の逆タイムマシン経営
将来市場になる海外市場に向けた市場を国内で準備
昨今はVUCAの時代と言われ、先が読めず、変化の大きい複雑な時代と言われており、経営における将来予測も容易ならざるものになっています。これに加えて生成AIの登場と急速な進化はさらに経営陣に難題を突き付けています。 しかしながら、そういった先の読めない時代においても人口動態、つまり今後どういった年齢構成になり、どのくらいの人口になるかはある程度、精度高く予測が可能なパラメータとして知られています。人口動態については、日本のみならず海外諸国についても情報を得る事ができ、日本では老齢者人口が多くを占めるシニア社会に最初に突入する国の一つであることが分かります。 日本に続いて、諸外国もシニア社会に突入していくことになるとすると、社会インフラや文化・習慣の違いはあれども、老齢者特有のニーズは普遍的に共通であるとも考えられます。とするならば、日本でのシニア社会向けのインフラ・プロダクト・サービスは近い将来日本に続いてシニア社会に突入する諸外国にもある程度のローカライズやカスタマイズで導入する事も可能になりそうです。 エイジテックの潜在的市場規模は300兆円とも予測されており、ヘルスケアの様に健康寿命を延ばす為のプロダクトも市場規模に含まれているものの、健康寿命の延長に加えて、シニア層のアクティブライフ化の為のインフラ・プロダクト・サービスは今後の日本発の産業として有望とみています。この実現にはシニア層の活動を物理的に支援するロボティックス、外部脳としての機能を提供する人工知能、そして日本が得意としてきたきめ細かな対話・対応の「おもてなし」をソフトウェアとしてデジタル化する事が必要だと見ています。 ■新幹線の輸出競争にみるタイミングの問題 みなさんが利用されている新幹線は初の東京オリンピックが開催された1964年に東京-新大阪間に開通し、その後山陽新幹線以後、日本各地に新幹線が敷設され、ビジネス・観光などの利便性を大きく高めました。最高速度時速210キロメートルで運行されていた当時、ドイツ・フランス・英国などではまだ時速160キロメートル以下とされており、走行性能において大きく先行していました。またその後の安全・安定運行の記録を見ても、世界に類を見ない素晴らしい超高速鉄道を産み出しました。 1980年頃から欧州、2000年代からアジア各国でも超高速鉄道導入が盛んになりました。日本の車両が提供されるなど、一部は日本企業がこれらの鉄道実現に貢献しています。世界の鉄道市場では、日本企業がリーディングポジションを取れておらず、カナダのボンバルディア、ドイツのシーメンス、フランスのアルストムの3社がBIG3とされ、最近は中国の合弁会社が巨大企業として世界市場に登場してきており、規模感において、最先端の技術を誇っていた日本企業の存在感は大きくありません。その点からも海外展開におけるタイミングは極めて重要であり、それを経済政策や法制で支援する国や地方自治体のアクションが必須でしょう。 関係各社の皆さんの努力と貢献により少なくない成功プロジェクトを実現させて来られたのは事実であるものの、世界的競争という意味では後塵を拝しているのは世界に先駆けて超高速新幹線を導入し、安全・安心な移動手段として世界の範たるレベルにした成果を十二分に活用しきれなかったのは残念です。JR西日本のサイトによれば鉄道の単位輸送量辺りのCO2排出量は航空機、乗用車の約5分の1と言われる為、環境への意識が高まるなか、世界レベルの日本鉄道技術・運営技術への期待が高まっているのではないかと思います。