ネット右翼の「本当の実力」は参院選で明らかになる…石破首相にトドメを刺し得る"危険因子"の正体
■小選挙区選出議員の“転向”の背景 つまり全国の都市部に遍在するネット右翼の「本当の実力」が発揮されるのは、小選挙区ではなく比例区となる。 衆院選の比例ブロックは地域ごとの区分けで、しかも政党名式である一方、参院選は全国比例の個人記名式を採用しているので、参院選比例こそネット右翼のまとまった集票力が発揮できる独壇場になる。つまり、ネット右翼などに大きく支持される旧安倍派議員は、このような選挙システムの都合上、参院選全国比例からの選出が必然的に多くなるわけだ。 また、今次の衆院選で福井1区から当選した自民党の稲田朋美がそうであったように、初めネット右翼から期待され寵児(ちょうじ)となったのに、LGBTQへの寛容姿勢など進歩的な政治姿勢に転換していった事例は、本人の思想転換というよりも衆院選の小選挙区制度の事情ということもある。 20~50万人で構成される小選挙区は、地方議会と区割りが重複している場合もあり、いわば「街の生活者の目線」が要求される。歴史修正主義や反中など、突拍子もない天下国家論は、小選挙区の有権者には受けない。 ■2025年夏が石破首相にとっての「本丸」 だから小選挙区で勝ち上がってきた衆院議員の多くは、一部を除けばその政治姿勢は「中庸」に調整されるきらいがある。しかし「街の生活者の目線」を気にする必要がなく、全国に天下国家論をぶつことで個人票が入る参院全国比例候補は、ネット世論と相性がよく、畢竟(ひっきょう)ネット右翼とも相性がよくなり右傾化し、いつしか安倍派の土台の一部を形成するに至った。 来夏の参院選では、参院自民党に大量に残った旧安倍派の「残党狩り」が始まるのかと思うところだが、そう単純ではない。参議院は定数が衆議院より少なく、1議席の重みが相対的に大きい。だからこそ来夏の参院選こそが石破にとっての「本丸」であり、「総決戦」なのだ。裏金議員だからといって、簡単に非公認とすれば予想外の敗北に直結しかねない。