海の温暖化で「庶民が食べられなくなる寿司ネタ」5選 あなたの推しネタはどうなる?
「円安?」「国債?」「チャットGPT?」よく耳にするけれど、実際のところ何のことなのか、何が問題なのかわからないまま……そんな今さら聞けないニュースや用語の数々を、どこよりも楽しく、そしてわかりやすくご紹介します!大人気アニメ「秘密結社 鷹の爪」の吉田くんが新聞記者となって、世の中の経済ニュース・時事用語を基本からていねいに紐解き話題となっている書籍『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』の中から一部を抜粋、編集してお伝えします。(構成/上栗崇) 【この記事の画像を見る】 本連載は、好奇心旺盛な「鷹の爪」吉田くんの質問を、先輩であるアカツキ記者が答えていく会話形式で構成されています。今回のテーマは「地球の温暖化と寿司ネタ」です。 ● 日本近海の海面水温は、平均で100年あたり1.28度のペースで上昇している 吉田くん(以下、吉田):先輩、ニュースで「海の温度が上がってる」って言ってました。海が温かくなったら、海水浴のときくちびるが紫にならなくていいですよね。 アカツキ先輩(以下、アカツキ):海水温の上昇はそんなお気楽な話じゃないんだ。気象庁によると、日本近海の海面水温は、平均で100年あたり1.28度のペースで上昇している。水温の変化のしかたには海域ごとにばらつきがあって、日本近海は世界平均の2倍以上のペースだ。 吉田:なんで日本の周りだけそんなにペースが速いんですか。 ● 海の温度が高くなったら何がまずいんですか アカツキ:海上より陸上の方が気温の上昇率が大きく、大陸に近い日本の海はその影響を強く受けている可能性がある。熱を運ぶ黒潮などの海流の変化も要因といわれる。 吉田:海の温度が高くなったら何がまずいんですか。 アカツキ:日本付近ではサンマやスルメイカ、サケ類の漁獲量が激減している。20年前の2003年と比べると、サンマとスルメイカの漁獲量は10分の1に、サケ類は5分の1に減ってしまった。その結果、2023年の日本全体の漁獲量は過去最低を記録したんだ。水温が変わったことで魚が生息する海域が変わってしまった可能性が高い。 吉田:そんなに減ってるんですか! でも魚がすむ場所が変わったなら、追いかけていって取ればいいじゃないですか。 ● じゃあ逆にたくさん取れるようになった魚はいないんですか。冷たい水が好きな魚ばかりじゃないですよね。 アカツキ:マグロやカツオを追って世界の海を駆け回る遠洋漁業と違って、サンマやスルメイカは日本から2~3日で帰れる場所で取る「沖合漁業」が中心だ。燃料に限りがあるし、最近は燃料が高騰していることもあって、魚がいないからと遠くまで追いかけるわけにはいかないんだ。サケ類の場合は、お隣ロシアとの関係で漁ができる海域が限られているという問題がある。 吉田:あっ、じゃあ逆にたくさん取れるようになった魚はいないんですか。冷たい水が好きな魚ばかりじゃないですよね。 アカツキ:そうだな。たとえばブリはこれまであまり取れなかった北海道で大漁が続き、近年の水揚げ量は1990年代の約20倍になった。有名な富山の「氷見の寒ブリ」にも引けを取らない脂ののりだそうだ。 吉田:温かい水が好きな魚は喜んでるってことですよね? じゃあプラスマイナスゼロじゃないですか。 ● 沖縄などのサンゴ礁では高い海水温のせいで大規模な白化現象とサンゴの大量死が アカツキ:そう単純な話じゃない。実は近年、沖縄などのサンゴ礁では高い海水温のせいで大規模な白化現象とサンゴの大量死が繰り返し起きている。また、沿岸に海藻が茂る「藻場」は様々な生き物にとって大切なすみかで「命のゆりかご」と呼ばれるが、海水温が高くなるとダメージを受けやすい。藻場が失われる現象は「磯焼け」と呼ばれていて、魚類やアワビ、伊勢エビ、ウニといった生き物が暮らせなくなっている。有害な植物プランクトンが大発生して魚介類を死滅させる大規模な赤潮被害も、高水温がきっかけになったと指摘されている。 吉田:やっぱり温暖化は困るんですね。回転寿司でサンマもイカもウニもアワビも伊勢エビも無くなるなんて絶対イヤです。よし、今日から地球を冷やすためみんなで冷蔵庫の扉を開けっ放しにしましょう。 アカツキ:それじゃ二酸化炭素が爆増するだろ。 ※本稿は『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。 ※吉田くんとアカツキ先輩が活躍中のアニメ連載「そもそも?知りたい吉田くん」は朝日新聞デジタルで読むことができます。
「鷹の爪」吉田くん