奈緒「言葉にできない関係性がすごく好き」外国人居住者が増えつづける東京で考える”多様性”
抑揚ひとつで意味が変わる中国語の難しさ
──松田さんは中国語担当の警察通訳人という役柄を演じる上で、どのような役作りをされたのでしょうか? 松田「中国語は初めてで、まったく分からなかったので、撮影が始まる数ヶ月前から、中国語の先生にマンツーマンでレッスンを受けて勉強しました。これまでにも日本と中国の作品を数多く担当されている、ベテランの先生なので安心でしたね」 奈緒「最初の台本読みのとき、有木野の中国語のセリフはどうやってやるんだろうと思っていたんです。そうしたら、龍平さん、もう台本読みの段階で、ペラペラ~って、すごくなめらかに中国語をお話しされていてビックリしました」 松田「通訳の役なので、中国語をしゃべるだけじゃなく、中国語を聞いて、日本語に訳したりすることも一連の動作でやらなければいけなくて。やっぱり難しいですね。現場でも、けっこういっぱいいっぱいになってやっていました」 奈緒「でも、現場ではほとんどNGもなく。本当に完璧です」 松田「いやいや……少し抑揚が変わるだけで、意味がまったく変わってしまうから。なかなかシビアです。とはいえ言葉って、そういうものだよな、って思いながら、けっこう練習しましたね。やれることはやった……っていう感じです(笑)」
名前のつかない関係性も世の中にはたくさんある
──原作コミックを読まれた感想をお聞かせください。 奈緒「物事に対して、いろいろなボーダーを知らない間に引いてしまうことってある、と私自身を振り返っても思うんですけど。そういう様々なボーダーを飛び越えようとしている姿を描いた作品だなと感じました。この原作を映像化することが、ドラマを見てくださった方たちが、知らないままでいることの怖さから解放されるきっかけになればいいなぁって。 あと、私は個人的に“言葉にできない関係性”がすごく好きなんです。もちろん、友達とか、恋人とか、家族とか、一言で表せる関係性も、誰かと話をするときには必要だと思うんですけど。そのどれにも当てはまらないような鴻田さんと有木野さんの関係性は、物語の主人公として、とても魅力的だと思いました。そういう本人同士にしか分からない間柄というのも、実は世の中にはいっぱいあるんじゃないかなって。この役を龍平さんと一緒に演じることができるのは、本当に楽しみで幸せなことだなぁと、原作を読んだときから思っていました」 松田「鴻田さんと僕の演じている有木野は、だいぶタイプが違う、一見、重ならない2人で。そこがおもしろいのかなと思います。有木野はもともと警察官だったんですけど、途中で通訳に転身するきっかけがあったんですね。それは彼にとってはトラウマともいえるくらい大きな事件で、そこからガラッと人が変わってしまって。 そんな有木野が、自分とはまったく真逆のタイプの鴻田さんと出会ったことで、凍っていた心がだんだん溶けていく。そして、自分がもともと大切にしていたことは何なのかを思い出していく……というイメージで僕はやっています。鴻田さんもそうですけど、奈緒さんは本当に優しい人で。初日から、とにかく気をつかわせないっていうか、一緒にいて、居心地がいいですね」 奈緒「ありがとうございます(笑)。たとえ性格や趣味が違っていても、この人のことをもっとちゃんと知りたいと思う気持ち、人として好きになっていくという感覚は、このドラマの中で、鴻田さん役を通して、自分も体験させてもらっているので、すごく楽しいです。 ドラマでは、2人の関係性が周りからどう見えるのか? というところに違和感を覚える瞬間も描かれるんですけど、自分たちの本来の関係性を人に分かってもらうことの難しさって、きっと実際にもあると思います。でも、鴻田さんは、みんなが見たいように見ているということまで受け入れている人だと思うんですよね。鴻田さんをやれて良かったです」