バレエとミュージカルの裏側を語る「客席から見えるキラキラの倍はドス黒い」
飲み会では主催者の膝にいつも女性が乗っていました
── 近年では、監督や演出家、プロデューサーによるパワハラやセクハラが露呈して大変な問題に発展したケースがいくつもありますが、ご自身の経験としては何かありますか。 ジゼル 飲み会の時には主催者の膝に必ず女性が乗っている劇団がありました。誰もが知っているような有名劇団ですよ。周りの人は平然としていたので、これがここの常識なんだなと思いました。 ── 生き残りのためにすり寄る役者もいれば、喜んで膝に乗せる人もいると……。 ジゼル そうです。立場のある人に「〇〇さ~ん♡」ってくっついていく子もいるので、そこで成り立っていればWin-Winなんだと思いますよ。 ── それで役をもらうこともあるんでしょうか。 ジゼル それが理由かは知らないですけど、その彼女は次の作品にも出てました(笑)。
クララ 私はダンサーとして参加する予定だった舞台で、急に抜擢されたような追加の役をもらったことがあります。 何だか変だなとは思っていたんですが、最終日に演出家に呼ばれて「次の作品、何の役が欲しい?」って聞かれたんですよ。 オーロラ えええ~~! 怖い! クララ 帰りに駐車場の方に向かう途中だったので、あわよくばそのまま車に乗せてどこかに連れて行こうと思っていたんでしょうね。だから「あ、大丈夫です!」って言って帰りました。 ジゼル クールすぎる! ── そうやって誘う悪い人もやっぱりいるんですね。 クララ ただこれらは10年くらい前の話で、今はだいぶ変わったと思います。顔合わせの時にあらゆるハラスメントを行わないと声明を出すところもありますし、契約書に外部の第三者委員会の連絡先が書いてありますし、気をつけているなと感じます。
自分自身のために美しくしていたい
── 最後に、皆さんは常に、美しい身体表現を競う環境に身を置いているわけですが、今、外見に関して気にしていることはありますか。 オーロラ 私自身、摂食障害も経験して、外見を気にした時期ってかなりあるんです。 けれども今思う一番大切なことは、何事にも謙虚にまっすぐに向き合うこと。バレエでも、普段の生活や他の仕事していても、それを一番感じています。 ジゼル 私はもう競争自体を気にしなくなりました。もちろんある程度はメテナンスが必要ですが、30歳を超えて抗えないものは多くなります。そうした中で、自分らしい美しさをもった人になりたいと思っています。 クララ 私も同じ。見た目はもちろん大切ではあるけれども、なりたい自分でいられればそれが一番いいかなって思うので。 今の私にとって、バレエは心を開放させる時間になっています。真剣に向き合っていた時は苦しかったんですけど、ちょっと距離ができたらより好きになれた。 バレエの時は身体の線が出るものを着るから、誰かのためではなく自分のために体型を保っています。 ジゼル 私にも自分自身のために美しくしていたいという思いはありますね。舞台のためでも、誰かの意向でもなく。 もちろん、可愛い服を着るのも大好きですけど、それ以上に自分自身の内面も見た目も、基本的な部分を磨く、そっちの美しさの方が興味がある。