バレエとミュージカルの裏側を語る「客席から見えるキラキラの倍はドス黒い」
── 良い役にピックアップされると仲間外れにされちゃうんですね。そんなことするよりも実力を磨いた方がいいと思うんですが。 クララ いろんなスタンスの人がいますね。お金が欲しいとか、有名になりたいとか。プロになったばかりの頃に、プロデューサーや演出家にごますりして役を取る人を目の当たりにして、業界自体に失望したことがあります。私はそこまでして仕事したくないなって思って。 ── どういう場面に遭遇したんですか。 クララ 稽古場での態度がひどい女優さんだったんですが、いい役がもらえないとなると演出家に泣き付いたり、打ち上げの時には隣に座って「本当にこの作品出られてよかったです♡」なんてごまをすったり。 でも、楽屋では「お金がもらえればいいからさ~」って言っていました。私にとっては初めての大きな公演だったし、希望を持って臨んだんですけどね。客席から観る世界と実際はやっぱり違うんだと思ってがっかりしました。 ジゼル 客席から見えるキラキラの倍くらいドス黒い。まぁでもみんな必死なんだと思うけど。 クララ そうそう。生き残るために必死。
── ロシアのバレエ団ではいかがでしたか。役をめぐっての争いなどはあったりするんでしょうか。 オーロラ 私がいたバレエ団は人数が多いわけではなく争いもなかったんですが、そもそも「この役はこの人」と決まっていて動かないものもが多いんですね。 ただ、その中でも役がもらえる瞬間はあって、例えば怪我など何らかの都合で出演できない時には、新人のダンサーが起用されることがあるんです。 ジゼル あ、ちょっと映画みたいになってきたぞ~(笑)。 オーロラ ふふふ。実は私、入団して間もない頃、本番当日に代役を経験をしました。 クララ 怖い怖い!! それできたんですか?
オーロラ 私は見ていると振りを覚えてしまう方なので、なんとかやり切りました。 ── 他の団員もいい役のチャンスを狙って振りを覚えておくのでしょうか? オーロラさんはなぜ抜擢されたと思いますか? オーロラ ロシア人にはすぐ対応できる子が少ないんです。対して、日本人は引き受けたら責任を持ってやり切る人が多いと監督にも信頼されているようでした。 ── 運も持っていましたね。 オーロラ そうですね、それをきっかけにちょっといい役をもらえるようになったので、運とタイミングの大切さは実感しました。