「個人輸入した中国のダイエット食品で…」「輸入原料で製造した製品で…」専門家「デンプンや脂肪をどんどん分解する<甲状腺ホルモン>を含む食品に要注意。なぜなら…」
「健診で指摘された異常値を健康食品で下げよう」「ダイエット食品で楽に痩せよう」など、健康食品を生活に取り入れる人が幅広い世代で増加しています。しかし2024年3月、サプリメントを摂取した消費者に健康被害が多数発生し、大きな問題となりました。そのようななか「実は、機能性や安全性について何の保証もない健康食品が多く販売され、健康被害の大半はこれらの製品で発生している」と指摘するのは、一般社団法人日本食品安全協会代表理事の長村洋一さんです。そこで今回は、長村さんの著書『健康食品で死んではいけない』より一部引用、再編集してお届けします。 【書影】健康食品の危険性と、賢く取り入れるための方法を専門家が解説。長村洋一『健康食品で死んではいけない』 * * * * * * * ◆ホルモンバランスを無茶苦茶にするダイエット食品 われわれの喉にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、食べたデンプンや脂肪をエネルギーに変える細胞の働きを活性化する役割を担っている。 そのため甲状腺ホルモンが過剰になると、デンプンや脂肪がどんどん分解されていく。 甲状腺機能亢進症(バセドウ病、橋本病)という病気になると、いくら食べても太らなくなるのはそのためである。 この話だけ聞くと、肥満の方にはうらやましい現象と考えられるかもしれないが大きな間違いである。
◆交感神経興奮作用の影響 甲状腺ホルモンは交感神経興奮作用を同時に持っている。 過剰症になると、心拍数の増加や血圧上昇、ほてりや発汗、手の震え、消化管の働きが過剰になることによる下痢など、交感神経の異常な興奮に起因する症状が現れる。 もし甲状腺に異常のない人が甲状腺ホルモンを混入したダイエット健康食品を摂取すれば、ホルモンバランスが乱れてとんでもないことになる。 実際、厚労省のホームページには、甲状腺ホルモン混入による事例が次のように紹介されている。
◆甲状腺ホルモン混入による健康被害 【事例1】個人輸入した中国のダイエット食品で発症 平成12年9月から12月にかけて、複数の医療機関から30~60代の女性6名が個人輸入した健康食品と称する無承認医薬品(商品名:せん之素こう嚢、発売元:広東恵州市恵宝医薬保健品有限公司)の服用後、頻脈、動悸、暑がり感、手指のふるえ等の甲状腺機能亢進症が疑われる健康被害に関する情報提供があった。 国立医薬品食品衛生研究所における分析の結果、甲状腺末が含まれていることが判明した。 【事例2】輸入原料で製造した製品で甲状腺機能亢進症の症状に 平成13年6月19日、兵庫県より情報提供。 ダイエット食品と称する無承認医薬品(商品名:ドリームシェイプ、販売元:健美漢方株式会社)の服用後、動悸、手のふるえ、倦怠感の甲状腺機能亢進症が疑われる健康被害について、複数の医療機関から4例情報提供があり、当該品を同県衛生研究所で検査したところ、甲状腺末成分のチロキシン(甲状腺ホルモン成分)が含まれていることが判明した。 甲状腺ホルモンによって乱されたホルモンバランスは、修復にかなりの時間を要し体調不良状態が長く続いてしまうことになる。健康被害に遭われた方々には同情を禁じ得ない。 ※本稿は、『健康食品で死んではいけない』(講談社)の一部を再編集したものです。
長村洋一
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