JR九州高速船の浸水隠し「刑事罰対象の可能性高い」…第三者委が報告書「幹部の誤った考えは非常識」
JR九州の完全子会社「JR九州高速船」(福岡市)が、博多港―韓国・釜山港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」(定員502人)の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、JR九州は21日、同社設置の第三者委員会(委員長・尾崎恒康弁護士)がまとめた調査報告書を公表した。浸水を隠すために船の警報センサーを移動させ、検査を受けずに運航したことなどが船舶安全法に抵触し、JR九州高速船や同社幹部が刑事罰の対象になる可能性が高いとした。 【表】JR九州高速船による浸水隠し問題の経緯
報告書によると、JR九州高速船は2月に浸水を把握したが、当時の社長ら幹部は「この程度の浸水ならば問題はない」と判断し、5月30日まで運航した。日々の浸水量を非公式の管理簿に記録し、浸水量が増えると、感知する警報センサーを上部にずらした。
報告書は、センサーの移動は、臨時検査を受けるべき航海用具の改造に該当する可能性が高いと指摘。移動させたにもかかわらず、検査を受けずに航行を継続した行為が、船舶安全法違反で刑事罰の対象となる可能性が高いとしている。
また、JR九州高速船幹部による2月の浸水判明時の隠蔽の決断について、代替船もなく韓国の旧正月で繁忙期だったとし、船首以外は水密が保持されていると考え、「(予約キャンセルを回避したいという)営業上や社内の事情を優先した」と指摘。約1週間後に船首の損傷の疑いを把握しても、「運航を続けたいとの思いから、(ダイバーによるチェックなど)本格的な確認作業を行わなかった」とした。
問題の原因は、当時の社長が船舶運航の知見や経験が乏しく、「船員経験が豊富な運航管理者らに遠慮して(運航継続を)容認した」と分析。事態を引き起こした責任は「JR九州高速船の幹部及び船長にある」と結論付けた。「幹部の誤った考えは、海運の世界では通用しない非常識なものと言わざるを得ない」と批判した。
JR九州高速船は昨年も検査を受けずに航行して行政処分や刑事処分を受けており、昨年7月に国に提出した改善報告書では、何らかの異常が発生した際には即座に報告する「まずは第一報」のルールを導入していたが約半年で破られた。