JR九州高速船の浸水隠し「刑事罰対象の可能性高い」…第三者委が報告書「幹部の誤った考えは非常識」
「JR九州グループは危機的状況」 第三者委はJR九州のガバナンス(企業統治)について、「(不正の)再発防止の取り組みは、グループ全体の信用に直接影響を及ぼし得る極めて重大な課題だった」とする一方、「積極的な関与は不見当(見当たらなかった)」とした。
そのうえで、「JR九州グループは計り知れない社会的信用を喪失しており危機的状況のまっ只中にある」として、親会社として積極的にモニタリングしていくことなどを求めた。
クイーンビートルは年内は運休が決まっている。JR九州は運航再開を目指すとしているが、報告書は、「船体損傷による浸水が頻繁に生じるようでは心もとない。根本的な解決策として、クイーンビートルの船体補強への抜本的取り組みや、気象・海象に関する運航基準の抜本的見直しなどが、重要な課題と考えられる」と指摘した。
JR九州とJR九州高速船は、報告書を踏まえた再発防止策をまとめ次第、記者会見する。一方、福岡海上保安部はJR九州高速船への捜査を続けている。
報告書について、神戸大の渕真輝准教授(船舶安全学)は「営業的なプレッシャーに負けたということになるが、JR九州グループとして、この日韓の高速船航路を本気で継続したいのであれば、利用者の信頼を回復するために見える形での組織の抜本的な改革が必要だ。大手海運会社など外部の協力を得なければ困難ではないか」と話している。
◆第三者委員会の報告書のポイント ▽浸水を確認した時点で関係機関への報告義務があり、海上運送法に抵触する可能性がある ▽航海日誌に浸水の記載を一切せず、船員法に抵触する可能性がある。「マル秘」と記載された非公式な管理簿で浸水を管理しており、社会的非難を受けてしかるべきだ ▽警報センサーを上にずらしたにもかかわらず臨時検査を受けずに運航を継続した行為は、船舶安全法に基づく刑事罰の対象となる可能性が高い ▽JR九州高速船の幹部が営業上や社内の事情を優先して運航を続けた ▽不祥事の再発防止を念頭に置いた親会社のJR九州の積極的な関与は見当たらなかった ▽船体補強への抜本的な取り組みや気象・海象に関する運航基準の見直しなどが重要な課題と考えられる