トランプ2期目で日本に迫る追加関税と防衛費の増額要求:森教授に聞く
「強い同盟国」「弱い同盟国」を区別
竹中 新たなトランプ政権で、NATO諸国や日本・韓国などの同盟国の関係はどう変化すると考えられるか。アメリカは、同盟国に防衛費のさらなる拡大を要求するのだろうか。 森 同盟条約があるから同盟国を守るというロジックではなくなるということだろう。共和党系の戦略家が展開している議論の根底にあるのは、アメリカがボロボロにならないと守れないような国は、同盟国であっても防衛対象とすべきではない、アメリカが甘受可能なコストで守れる国であれば、防衛対象としうる、という考え方だ。端的に言えば、「強い同盟国は守る。しかし、弱い同盟国は足手まといでリスクだから守らない」ということだ。 そこで弱い同盟国と強い同盟国の境界線が、国防予算の対GDP(国内総生産)比の数字として出てくるということだ。これが3%になる可能性があるという臆測がある。要するに、同盟はアメリカにとってメリットがあるから結ぶものであって、そもそもアメリカが国力を消耗しなければ守れないような国と同盟を結ぶことにメリットがあるのかという、ある意味では常識的な見方だ。 台湾については、トランプ氏は「対GDP比10%」と言及したことがあるようだ。もちろんすぐに実現はしないが、「狙われているのはあなたたちで、中国を抑止するための防衛力増強なのだから、台湾がNATOと同じ2~3%でいいわけがない」というロジックのようだ。その増やした防衛予算で、アメリカの防衛装備を購入しろということになるのではないか。アメリカの防衛産業の拡充とセットになっているとみられる。 竹中 トランプ氏は日米関係をめぐって「アメリカは有事の際に全面的に日本を守らなければならないが、アメリカが攻撃されても日本は何もしない」と何度も発言している。一方で、石破茂首相は日米安保条約をより双務的にすることを持論としている。両首脳がこの点で一致することは考えられるか。 森 双務性について、例えば米軍が西太平洋で中国と交戦状態に入ったら、その具体的な状況にもよるが、日本は「存立危機事態」を認定して集団的自衛権を行使しうる。地球の裏側で助太刀するのは無理だが、状況次第で「アメリカのために日本は行動を起こせる」と言うことができる。しかし石破首相の、地位協定をめぐる話から双務性を展開すると、パンドラの箱を開けるというか、トランプ氏が「一国主義」丸出しの議論を展開して、やぶへびになる可能性もある。例えば、「米軍の駐留に必要な地位協定で不都合が生じるというなら、米軍を撤退させましょう」と言われて、「ちょっと待ってください、そういうことではなくて…」というやり取りになり、関係がこじれるだけで何も得るものがないという結果を招くことが想像される。