260億円の損失「みんなの銀行」大苦戦は、あまりに必然の結果だ 業界トップコンサルタントが分析!日本人が学ぶべき「重大すぎる教訓」とは?
しかし残念ながら、このような企業の勘違い・ひとりよがりは、「デジタルを使った新事業」においては、けっこう多いのです。 ■「ビジネスモデルをマネしただけ」の企業の末路 翻って「みんなの銀行」を考えてみましょう。 同じビジネスモデルの競合に対する、違いを打ち出せていたでしょうか。 2015年頃には、N26(ドイツ)をはじめとしたチャレンジャーバンクと称されるデジタルバンク群が開業していました。 チャレンジャーバンクとは主にスマートフォンで金融サービスを提供するビジネス形態で、スマホを使うことの利便性や利用コストが安い、あるいはかからないことなどから、一気に顧客を獲得していきました。
ですから先行企業からコピーできるところはかなり多かったはずです。 公開されている情報から見るに、「みんなの銀行」は、スマートフォンだけで利用が完結すること、UXの良さや、口座開設で1000円がもらえるといったメリットを訴求しています。 しかし金利そのものやATMからの引き出し手数料などに関しては、十分に違いを打ち出せているようには見えません。 金利や引き出し手数料での違いなどは「打ち出す必要がないだろう」という判断だったのかもしれません。
逆に「みんなの銀行」が打ち出した「スマートフォンで完結」といった違いについては、競合になりうる日本のネット銀行群も、多少の差はあるけれども、すでに実施していました。 顧客としては「スマートフォンで完結」というだけでは「みんなの銀行」をあえて選ぶ理由にはなりづらいといえます。こだわったであろうUXも同様です。 また、当時公開された記事広告などでは、「世界初のフルクラウドの勘定系システムである」ことが強調されていましたが、これぞ一般の顧客にとっては「どうでもいいこと」でしょう。「違いの打ち出し」にはなりません。
コピーして真似するだけでは、同じビジネスモデルの他社(たいてい複数社は存在する)との「違いが打ち出せず、競争力が出ない」と述べましたが、「みんなの銀行」も「違いの打ち出し」の磨き込みが不十分であったとしか思えないのです。
大野 隆司 :経営コンサルタント、ジャパン・マネジメント・コンサルタンシー・グループ合同会社代表