フリーランス新法のハラスメント対策は 芸能、エンタメ業界も保護対象?専門家が解説
2024年11月1日施行で注目される、いわゆる「フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法、正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」の中で、フリーランスに対するハラスメント防止を企業に義務づける項目があります。 フリーランス新法は、フリーランスで活動する人の労働環境を保護する法律です。ただ、当事者である企業の担当者やフリーランスとして仕事をする人の中にも、内容についてまだ詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか。 フリーランス新法では、ハラスメント以外にも企業に義務づける項目がありますが、この記事ではハラスメント対策に焦点をあてて解説します。フリーランスへの対応は大きく変わりましたので、当事者の人は参考にしてください。 筆者プロフィール:村嵜要(むらさき・かなめ) ハラスメント専門家。東京都の2022年度「ハラスメント防止対策推進事業」アドバイザー。今話題のパワハラ・セクハラ・カスハラ・フキハラなどを、テレビの報道番組で解説。TBSテレビ「ひるおび」「news23」、日本テレビ「news zero」「news every.」、フジテレビ「めざまし8」、テレビ朝日「グッド!モーニング」などに出演歴あり。ハラスメントをテーマにしたテレビ番組では数多くの事例提供や再現ドラマの監修もおこなっている。著書(共著)に高等学校家庭科の副教材『生活デザインガイド2024』(大修館書店)。
1.フリーランス新法で求められる「ハラスメント対策」とは?
厚生労働省のパンフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/001329767.pdf)をもとに、重要なポイントを紹介します。 まず、フリーランス新法は、発注事業者からフリーランスへの「業務委託」を対象としています。業務委託とは、「事業者がその事業のために、他の事業者に、給付に係る仕様、内容等を指定して、物品の製造、情報成果物の作成または役務の提供を委託すること」と定義されており、業種・業界の限定はありません。 発注事業者には、取引条件の明示(3条)や期日における報酬支払い(4条)、育児介護等と業務の両立に対する配慮(13条)といったさまざまな義務が課せられています。この記事では、その一つのハラスメント対策に係る体制整備(14条)を見ていきます。14条では以下の内容が規定されています。 発注事業者は、ハラスメント行為によりフリーランスの就業環境を害することのないよう、相談対応のための体制整備など必要な措置を講じなければならない。(14条1項) 発注事業者は、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはならない。(14条2項) ハラスメントの類型として、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、マタハラ(妊娠・出産等に関するハラスメント)、パワハラ(パワーハラスメント)があります。 そして、発注事業者側はハラスメントを防ぎ、ハラスメントが起きてしまった場合に適切に対応するために、以下の措置をとらなければいけないとされています。 1.ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発 (1)発注事業者の方針等の明確化と社内(業務委託に係る契約担当者等)へ周知・啓発すること。 (2)ハラスメント行為者に対しては厳正に対処する旨の方針を就業規則などに規定すること。 2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 (1)相談窓口を設置し、フリーランスへ周知すること。 (2)相談窓口担当者が相談に適切に対応できるようにすること。 3.業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 (1)事案についての事実関係を迅速かつ正確に把握すること。 (2)事実関係の確認ができた場合、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に実施すること。 (3)事実関係の確認ができた場合、行為者に対する措置を適正に実施すること。 (4)ハラスメントに関する方針の再周知・啓発などの再発防止に向けた措置を実施すること 4.併せて講ずべき措置 (1)上記1~3の対応に当たり、相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員およびフリーランスに対して周知すること。 (2)フリーランスが相談をしたこと、事実関係の確認などに協力したこと、労働局などに対して申出をし、適当な措置を求めたことを理由に契約の解除などの不利益な取扱いをされない旨を定め、フリーランスに周知・啓発すること。