フリーランス新法のハラスメント対策は 芸能、エンタメ業界も保護対象?専門家が解説
3.エンタメ業界、芸能従事者へのパワハラ・セクハラが課題
フリーランス新法は全業界が対象になりますが、1つの事例としてエンタメ業界について触れたいと思います。理由として、エンタメ業界はフリーランスで活動する人が多く、職種の幅が広いことに加え、特殊な働き方であることが挙げられます。例えば、タレント、俳優、アーティスト、声優など専門性の高い職種で働く芸能人と呼ばれる人たちがいます。 2023年には宝塚歌劇団のパワハラ問題が大きく報道されました。この問題でも、入団から6年目以降の劇団員が働く環境は、業務委託契約で立場の弱いフリーランスであったことがわかっています。 映画界では、Netflixが開発した「リスペクト・トレーニング」を撮影前に受講してハラスメント防止の理解を深めてから撮影に入るなど、業界独自に先進的な対策を進めている例があります。 しかし、そのような対策が導入された背景として、映画俳優が性被害に遭い、映画監督が逮捕されるなど、セクハラを超えた事件が相次いだことが挙げられます。クローズドな場面でキャスティングの権限を持つ映画監督等が仕事を与える見返りを求めれば、俳優がセクハラや性被害に遭いやすくなることが容易に想像できます。 エンタメ業界は他の業界よりも、優越感な立場である者の立場がより強くなり、ハラスメントが発生しやすい特殊な環境下であると考えられます。 これは他の業界にも共通することですが、1人が影響力や権限を持ちすぎ、その人がハラスメントの知識がなかったり、知識があってもわざとハラスメントをしたりするような場合、実際問題として被害者にとっては助け舟がありません。取引相手がフリーランスにもかかわらず、知識不足からフリーランスの自由意思を妨げる指示や条件、強要があってもハラスメントになる場合があります。 このようなことが起こらないように、権限は分散したり、複数の人が権限を持つようにしたりして、公平な判断ができる体制をつくることも、強く求められています。フリーランス新法が施行されることにより、エンタメ業界が大きく変わるきっかけになることを期待します。