フリーランス新法のハラスメント対策は 芸能、エンタメ業界も保護対象?専門家が解説
2.なぜフリーランスへのハラスメント対策が必要なのか
厚労省は、個人であるフリーランスと、組織である発注事業者の間には、交渉力などの格差があり、フリーランスが取引上弱い立場に置かれていると指摘しています。 実際、2019年に日本俳優連合、MICフリーランス連絡会、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が公表した「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート調査」によりますと、フリーランスとして活動する人の中で、取引先や上司からパワハラは受けた経験がある人は61.6%、セクハラを受けた経験がある人は36.6%にものぼります。 この調査結果を見ても、フリーランスで働く人に対するハラスメント防止の必要性は明らかです。 フリーランス新法ができる以前にも、2020年6月施行のパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)で、取引先の従業員、派遣社員やフリーランスの人に対するハラスメントについては取り組むことが望ましいとされたものの、義務とまでは明記されていませんでした。 積極的に対策をしてきた企業もある一方、対策が遅れている企業は結局野放し状態であり、実効性のある法律とまでは言いがたかった実情があります。 また筆者は、フリーランスで活動する人は仕事をもらう立場、発注側は仕事をあげている立場という潜在意識がそれぞれに根づいていることが課題と考えます。その根づいた意識があるからこそ、発注企業からのパワハラ、セクハラがあったとしても、拒否することによって仕事をもらえなくなるなど不利益な取り扱いを恐れて、理不尽なパワハラやセクハラも受け入れざるを得ない構図が生まれやすくなります。 誰もが生活があり収入を確保する必要があることから、大ごとにしたくないという心理も働きます。しかし、この悪循環が続くと発注する側のハラスメント防止の意識はますます薄れて、立場を悪用する人が後を絶ちません。この悪循環を断ち切るために整備されたのが、今回のフリーランス新法です。新法の施行は、フリーランスで活動する人が働きやすくなる追い風となることでしょう。