直木賞作家が仕掛けるシェア型書店、1号店は初月から黒字に
直木賞作家の今村翔吾さんが、2024年4月に東京・神保町で開業したシェア型書店「ほんまる」には、書店再興に賭ける今村さんならではのアクションがありました。書店“冬の時代”に、いかにそのビジネスは息を吹き返せるか。当事者としての今村さんの思考と行動とともに、書店業界の現在地を、様々に探っていきます。 【関連画像】オープン日は多くの来店者が 今村翔吾(いまむら・しょうご) 作家、書店経営者 1984年、京都府生まれ。関西大学文学部卒業。ダンスインストラクター、作曲家、滋賀県守山市の埋蔵文化財調査員を経て、2017年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で作家デビュー。18年『童神』(後に『童の神』に改題)で角川春樹小説賞、20年『八本目の槍』で吉川英治文学新人賞、『じんかん』で山田風太郎賞、22年『塞王の楯』で直木賞を受賞。「くらまし屋稼業」シリーズ、『幸村を討て』『茜唄』『戦国武将伝 東日本編/西日本編』などベストセラー多数。21年に大阪府箕面市の書店「きのしたブックセンター」を事業継承。22年に一般社団法人「ホンミライ」を設立。23年、佐賀市に「佐賀之書店」を新規出店。24年3月からシェア型書店の「ほんまる」プロジェクトをスタート。4月に東京・神田神保町に1号店を出店。 今村翔吾さんが東京・神保町にシェア型書店「ほんまる」を出店されて5カ月がたちました。手応えからうかがっていきたいと思います。 今村翔吾さん(以下、今村):おかげさまで初月から黒字が達成できました。初月が40万円ほどの黒字で、その後は100万円強で推移しています。これは家賃や人件費を全部払った上での営業利益です。 それはすごいですね。スタートでは何人ぐらいの棚主さんが集まりましたか。 今村:個人、法人合わせて約250人が集まってくれました。 それは満床という状態でしょうか。 ●「ほんまる」1号店はほぼ満床でスタート 今村:ほぼ満床です。「ほんまる」はサブスクリプション方式で棚を貸しています。料金は棚の位置によって「S」(ひと月9350円)から「F」(同4850円)まで、7段階に分かれていて、「S」は一番目につきやすい位置で、ひと月の賃料も一番高い位置の棚です。棚は、この「Sプラン」から埋まっていきましたね。次に埋まったのは、Sの次にいい位置にある「A」(同8360円)です。 逆に埋まりにくかった棚はどれでしょうか。 今村:当初は最上段の「F」が一番埋まりにくいだろうと予測していたのですが、実際は足下の「C」「D」が埋まりにくかったですね。今後「ほんまる」を多店舗展開していく際は、足下棚は売らずに、ストック場所として使うか、もしくは足下の価値を高める工夫をしていくことが必要やね。例えば足下棚は2個で1個の料金にするとか。 シェア型書店の業態を部屋の賃貸業と捉えた場合、棚主さんさえ集まれば、収益は安定しますよね。そこはまずクリアできた、ということですね。 今村:そうなります。 粗利などをざっくりお聞かせいただけますか? 今村:棚貸しについては、基本的に仕入れがないので、粗利率は100%になります。 そうか! もう一つ、書店としての本の売り上げ(棚主が並べた本の販売)からの収益についてはいかがでしょうか。 今村:本の売り上げについては、手数料を5%と低く設定しているので、収益への貢献はそれほど大きくはありません。とはいえ、面白い棚主さんたちが全国から集結してくれたので、本も売れています。さらに「ほんまる」特製のトートバッグやマスキングテープのようなオリジナルグッズも売れています。本とグッズを合わせたところの粗利率は13~14%ぐらいです。