直木賞作家が仕掛けるシェア型書店、1号店は初月から黒字に
ということから、「ほんまる」のビジネスモデルは、圧倒的にサブスクということが見えてきますね。 今村:だからこそ、料金をいただいている棚主さんに、いかに満足していただくか、そのソフト面がこれから重要になると思っているところです。焼き肉屋さんの食べ放題4000円プランで、「おいしいお肉」が食べ放題なのか、いうたら「よう分からんお肉」が食べ放題なのか、それによって満足度の差は大きいでしょ。棚主さんには、ひと月の棚代がお得で、継続に値すると思っていただくよう努めないといけません。ここからは集中して、ソフト面を充実させていこうと思っています。 神保町にはシェア型書店の業態で先行する「PASSAGE by ALL REVIEWS」「猫の本棚」があります。意識されますか。 今村:それぞれにすみ分けながら、ともに話題になればいいと思っています。競合でつぶし合うということは、まったく考えていません。商売では値下げ競争に入ってしまうことが、一番あかんことだと思っていて、これ、僕が日経さんに言うのは釈迦に説法だと思うけど。 とんでもございません。で、ソフト面を充実させていく方向性は分かりましたが、その中身は、どのようなものでしょうか。 今村:「ほんまる」の売りとして、本好きの人が、本当につながりたい人たちと交流できるところを、頑張って開拓していこうと思っています。開業にあたって、佐藤可士和さんにブランディングをお願いしたことも、その一環です。 4月27日のオープン日には、開店記念として、棚主さんを招いて今村さん、可士和さんとのトークセッションがありましたね。 今村:参加者の方々との距離が近くて、質問もたくさん来て、楽しい時間でした。ということで、「ほんまる」では2025年いっぱいまで、棚主さんに向けて定期的に開催するイベントを、すでに全部組んだんです。 来年分まで全部ですか、早いっ。どんな内容ですか。 ●直木賞作家ならではの「あの人」を呼ぶ 今村:1年のうちにリアルの大型イベント2回、中型イベント2回、加えて全国からオンラインで参加できるセミナーイベントを8回です。オンラインでは出版・書店業界にいる作家、書店経営者、取次、編集者の方々に、自分たちの仕事が今どうなっているかを、それぞれの立場から語ってもらうようにしています。第1回は僕が務めます。 おおっ。 今村:それで、11月には読書シーズンに合わせて「秋のほんまる読書まつり」を催します。ここでは棚主さんの手数料を普段の5%から0%にして、お客さんの方も、5000円以上のお買い上げだったら、500円の金券をバックする。要は売る方も買う方も、いっぱい回せる仕組みにして、棚主さんの本棚が総入れ替わりするぐらい、どんどん仕入れて、どんどん売ることをやろうと思っています。 楽市楽座デーみたいですね。それが中型イベントですか。 今村:はい、中型イベントはもう1つあって、それは11月の裏にあたる5月に、棚主さんのエッセーを集めた『ほんまる』という書店誌を刊行しようと。個人の棚主さんにはそれをプレゼントして、法人の棚主さんには、広告ページを無料で差し上げて、さらに希望者を募って1社か2社、僕と対談してもらって、その会社の魅力や、なぜ「ほんまる」の棚主になったかをPRしていただく。それらを全部、無料でやってやろう、と。 武道館でコミケ(コミックマーケット)のようなイベントを実現したい、ともおっしゃっていましたが、その第一歩ですね。 今村:「ほんまる」の書店誌は、棚主さん以外のお客さんには数百円ぐらいで売れたらいいな、とも思っているので、まさにコミケのイメージです。 で、大型イベントとは?