不法投棄産廃で出来た『ネオ・キタロー村』 村長「役目果たした」閉村決意
メディア取材、3000人来場……注目集めた一方、弊害も
“開村”からおよそ17年の間に約3000人が訪れた。テレビや雑誌などの取材は、全国放送番組も含めて40回以上。体験記を公開する個人ブログや、一部のインターネット上の地図には、名前を入れれば場所が表示されるようにもなった。 だがそんな村の閉鎖について考えるようになったのは今年に入ってから。「年もとったし、建物も老朽化してきたし」 ツリーハウスはこれまでに1度建て替えた。木の成長で、建物のバランスが崩れて、一定方向に傾いてしまうためで、前回のツリーハウスは10年もたなかった。現在のツリーハウスもそろそろ建て替え時期だが、体力を考えると、建て替えは現実的にできないという。 何より「建てた当初は家族も喜んでくれたが、いまは継続を猛反対されている」 以前はテレビ出演しても、話題になるのは一時期だった。ところがインターネットが普及し、来場者が写真をアップしたブログなどの情報がたくさん表示されるようになった。一時は、PRになると前向きに考えていたが、迷惑電話がかかってくるような弊害もでてきた。 ひょうきんでサービス精神旺盛な吉口さん。だが、真偽不明な噂がネット上に出回るようになり、「自分よりネットに詳しい孫に反対されると、さすがに辞めることを考えるよね」とうつむいた。
廃棄物なくなり、人との交流生み出した村 最後の春に
吉口さんの村ができてから、施設周辺にゴミが捨てられることはなくなった。思いがけなく始まった憩いの場所の提供で、多くの交流が生まれた。来場がきっかけとなり、家族ぐるみで付き合う人や、リピーターも少なからずできた。 「村は一定の役目は果たした。建物は自分が元気なうちにすべて壊して、家族に迷惑をかけないようにする」と閉村へ動き出すことを考えている。それでも「村を無くして空いた場所に、また不法投棄されたら、それは困るよね」と笑った。 辺りは4月下旬~5月にかけて、ヤマザクラが見ごろを迎える。ほんのりピンク色の花びらが一風変わったネオ・キタロー村を彩るのは、今春が最後になりそうだ。 ■ネオ・キタロー村……愛知県岡崎市井沢町、県道35号沿い (斉藤理/MOTIVA)