不法投棄産廃で出来た『ネオ・キタロー村』 村長「役目果たした」閉村決意
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江戸幕府初代将軍、徳川家康の生誕地「岡崎城」がある愛知県岡崎市。城を訪れる観光客でにぎわう市中心部からおよそ20キロ、山道を車で30分ほど走ったところに、知る人ぞ知るB級スポットとして人気の施設がある。 その名も「ネオ・キタロー村」。札幌市時計台を模した施設があるかと思えば、サクラの木の上に作られたツリーハウスなど、物珍しさやデザインの奇妙さなどから、テレビのバラエティー番組や雑誌などでもこぞって取り上げられた。だが、ネオ・キタロー村の「村長」で管理人の吉口章さん(80)が、「そろそろ潮時」と、今年いっぱいで閉鎖する意向だと明かした。
1万平方メートルの私有地にツリーハウス きっかけは不法投棄の監視
県道35号沿いに出現する「ネオ・キタロー村」。村長の吉口さんが所有する約1万平方メートルの土地に作った。 吉口さんは、もともと大手建築会社の下請けで、大工として働いていた。しかし県道沿いであるこの所有地は周辺に民家がなく人の目が行き届かないため、1995年ごろから、廃材やバイク部品などの産業廃棄物が捨てられるようになった。 「悪いことをする人がいるんだなと思った。ちょうどカーブのところだから、いったん車を止めて捨てたりしやすいと見られても仕方が無かった」 半ばあきらめ、数年は放置していたが、定年で仕事の第一線から退くと、この不法廃棄物と向き合おうと決心。ちょうど廃棄場所には大きなヤマザクラの木があったことから、この木を生かして、不法投棄の様子を撮影するためにツリーハウスを作ることにした。 ツリーハウス建設とともに、放置してあったゴミ処理も進めた。自ら処理場に運んだ量は軽トラックで2台分。「とても悔しかった記憶」として一部は残し、敷地内の危険箇所をふさぐ板などに利用している。
小学生の一言「鬼太郎の家みたい」 秘密基地・憩いの場所づくりへ方向転換
ツリーハウスは、2000年頃に完成。当初は不法投棄の監視のほか、家族の憩いの場として使っていた。そんなある日、近所の小学生から、漫画家・水木しげるの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」に描かれた「鬼太郎の家みたい」と言われたことをヒントに、「子どもたちの秘密基地のように、楽しめるような場所にしよう」と思いたち、「キタロー村」を“開村”した。 ここでも廃材を再利用。大工のノウハウを存分に生かした。自身が「目立ちたがりの性格」ということもあり、人目に付く装飾やデザインを施した。 「あなたは好きなことをやっていて、いいわよね」と妻からの不満の声で、家族に貢献しようと思いたち、09年には、ツリーハウスの向かいに、札幌市時計台をイメージし、5分の1スケールの建物を建てた。広さ10畳ほどの部屋のほか、入浴施設、ピザが焼ける窯も完備。後には希望者には光熱費のカンパ代として1日1000円で貸し出すようになった。この施設がきっかけとなり、「新しい」という意味を込めて「ネオ・キタロー村」と改称し、今に至る。