スペシャリテは鳩の香り揚げ。六本木「隼」の真上に、姉妹店となる“私房菜”が誕生!
丸鶏を揚げた“脆皮鶏”は、近頃すっかりおなじみになった感があるが、(日本では)乳鳩版を出す店はまだまだ少ない。「常時、鳩の姿揚げを食べられる店は、うちぐらいだと思いますよ」。そう胸を張る吉田浩明シェフ。以前の店では“脆皮鶏”もスペシャリテだったそうだが、今回は、アラカルト主体の店ということもあり、いろんな料理を味わってもらえるよう鶏よりも小ぶりな鳩で勝負。手間のかかる下ごしらえも手を抜かず、揚げ方にも自分なりの流儀がある。
吉田浩明シェフによれば「まず、塩とオリジナルの秘伝のスパイスで鳩に味を入れ、その後、皮目だけに熱湯をかけるんです。こうすることで皮に張りが出る」のだとか。だが、ここで下ごしらえは終わりではない。次に、その鳩に酢と水飴を混ぜた“皮水”を塗り、約1日干して乾かす……とここまでやって、下ごしらえはやっと一段落。こうした作業を日々繰り返す手間を考えれば、他店が予約制にしている理由もよくわかろうというものだ。
揚げるのは、もちろんオーダーが入ってから。下揚げした乳鳩をたっぷりの油に入れ、最初は泳がすようにして揚げ、徐々に油の温度を上げていくところがミソ。油温が上がっていくに従って、(フレンチのアロゼの如く)油を鳩全体に掛け回しながらしっかりと仕上げていく。この温度感が大切なのだ。
「温度計とかは使わないので正確な温度はわかりませんが、だいたい170℃ぐらいから揚げはじめ、最後は250~260℃ぐらいになっていると思いますよ」と吉田浩明シェフ。油温が上がるにつれ、油が爆ぜる音もチリチリと軽やかになってくる。それと共に、乳鳩はこんがりと狐色の輝きを放ち、心なしか次第に張りも出てくる。見るからにうまそうだ。
ちなみに、丸ごと揚げた當紅脆皮鴿は、食べやすくカットされて登場するのでご心配なく。アツアツにかぶりつけば、皮は“脆皮”そのものの軽快さ。パリパリの皮の内側から滲み出るジューシーな肉汁、鉄分のうまみ豊かな身のおいしさは格別。紹興酒はもちろん、赤ワインにも合いそうだ。 「當紅脆皮鴿」と並ぶ吉田浩明シェフのおすすめの一つが「滷水三品盤 潮州式スパイス醤油煮3種盛り合わせ」2,640円。