元町駅から1万500歩。港町・神戸の絶景と山道の新緑を楽しむ
六甲山系の麓にある神戸は海から山までの距離が近い。中心街から北へ20分~30分も歩けば、絶景の高台にたどり着く。生まれも育ちも神戸で、山歩きの好きな私の母のおすすめは、諏訪山公園にあるビーナスブリッジだ。ここからの景観は、街と港に手が届きそうだとか。さらに北野異人館エリアから布引(ぬのびき)の滝に足を延ばせば、神戸の海と山、異国情緒を欲張りに楽しめると教わった。 元町駅から街中の緩い上り坂を歩き、1902年築のルネサンス様式の洋館、兵庫県公館を通り過ぎ、初の目的地の相楽(そうらく)園へ。広い池泉回遊式庭園や旧小寺家厩舎など三つの国の重要文化財指定の建築を巡ってからさらに北上し、新緑まぶしい諏訪山公園の入り口に到着した。 【写真】雄滝を見下ろす高台に立つおんたき茶屋。冷し山菜とろろ蕎麦は夏季限定メニュー
散策路は急な上り坂だったがすぐに視界が開け、標高90㍍の高台の広場に出た。ここで1874年にフランスの天体観測隊が太陽・金星・地球が一直線に並ぶ「金星の太陽面通過」を観測したことから「金星台」と呼ばれるようになり、日本天文遺産に認定されている。 隣接する諏訪神社に参拝してから、散策路を上るとビーナスブリッジがある。この橋は金星台の「金星」から命名された。優雅な8の字を描く長さ90メートルの歩行者用ループ橋で、斜面からせり出すように立つため、空中散歩をしているよう。神戸の絶景といえば六甲山上が有名だが、ここも違った魅力がある。以前、車で訪れたことがあったが、元町駅からこんなに気軽に歩ける場所だったことに驚いた。景色に見とれながら橋を渡り、標高160メートルの展望台、ビーナステラスへ。ベンチに座ってしばらくの間、さらに眺望に見入った。眼下にそびえ立つビル街やその向こうに広がる神戸港がすぐそこにあるように感じた。
山の散策路を通り布引の滝へ
古くから海外に目を向けて発展を遂げてきた神戸は、国際色豊かな街である。住宅街の中に姿を現した黄色いレトロな建物は「海外移住と文化の交流センター」だ。1928年に、南米などに日本人移住者を送り出す拠点として開設された。 さらに東へ向かうと異国情緒漂う北野異人館街エリアに入ってきた。風見鶏の館前の北野町広場でひと休みしてから北東へ。このエリアの最北に背山(せやま)散策路と刻まれた石碑がある。坂道を上ると、港みはらし台の看板がかかっており、ここからも街と港が一望できた。イノシシ除けの防獣フェンス扉を通り抜け、一気に山深くなった。30分ほど前まで市街地を歩いていたのがうそのようで、神戸の自然の奥深さを実感する。