異例の”即決”FA人的補償で横浜DeNAが巨人から獲得した田中俊太は“第2の平良”となれるのか?
田中は、広島の田中広輔の弟で、地元神奈川の東海大相模高出身。東海大、日立製作所を経て17年にドラフト5位で巨人に入団した。ルーキーイヤーから内野はどこでも守れる左打ちのユーティリティープレーヤーとして重宝され、1年目に99試合に出場、2019年には「7番・三塁」で開幕スタメンに名を連ねた。 今季は48試合に出場し、打率.265、1本塁打、6打点の成績に終わったが、阿部2軍監督が1軍ヘッドに緊急昇格した9月16日の阪神戦で今季初スタメン抜擢を受け1号本塁打を含む5打数3安打2打点と大暴れをしたことが強く印象に残っている。スタメン出場に加え、左の代打、代走、守備固めとフル回転。ソフトバンクに惨敗した日本シリーズでは2本のヒットを打って一人気を吐いた。 その田中は巨人を通じて「プロ野球選手として育ててもらったジャイアンツでの経験は、私にとってかけがえのない財産です。ジャイアンツで学んだことを生かして、新天地の横浜DeNAベイスターズでも勝利に貢献できるよう、精いっぱい頑張ります」と抱負を語った。 横浜DeNAは巨人との人的補償では3年前に平良を獲得して大成功した例がある。今季は故障で途中離脱するまでローテーの中心を担い、防御率のリーグトップにも立った。最終的には、14試合、防御率2.27、4勝6敗の成績。元巨人としては、他にも2018年オフに戦力外になった中井をトライアウトから獲得して再生させ今季は69試合に起用するなど1軍戦力にもなっている。 投手と野手では出場機会が違うが、田中は“第2の平良”となりえるのか。 楽天、巨人、西武で“参謀”を務めた経験のあるBCリーグ新潟アルビレックスの総合コーチで評論家の橋上秀樹氏は、こんな見方をしている。 「巨人にしてみれば田中をプロテクトから外した段階で横浜DeNAに狙われるのは想定済みだったのかもしれません。似たような若手の内野手が多いですからね。一方で横浜DeNAは、編成上、二遊間を補強ポイントにしていたので予め調査していた上で決めたのでしょう。ルーキーの森敬斗が終盤に存在感を示したので、果たして、そこまで田中が必要だったのか、という疑問もありますが、フロントとしては、森はまだ少し時間がかかるという判断だったのでしょうか。投手と野手の単純比較は難しいですが、田中が第2の平良になるには、まず二塁のレギュラーのポジションを獲得することが重要になってきます。おそらく三浦監督は使うでしょう。柴田、大和、倉本、森らとの争いで、どう特長を生かしてチーム内競争を勝ち抜くのか。まずは打撃での結果ですね。今の実力のままでは難しいかもしれませんが、ソフトバンクがいい例を示しました。彼が第2の平良にならなくともチーム内の競争を活発化させることでチーム力の底上げにつなげ、横浜DeNAに足りなかった集中力を作る効果を生む可能性もあるんじゃないですか」
田中は新天地でのレギュラー奪取に向けスピードを生かした打撃で存在感を示す必要があるだろう。 梶谷、井納という投打の貴重な戦力を巨人に抜かれた横浜DeNAが、“打倒巨人”の切り札として田中をどう使うのか。今季は巨人との対戦成績を最終的には12勝12敗としたが、重要な序盤戦の戦いでは圧倒されていた。三浦新監督が掲げる「優勝」を手にするには、巨人に勝つことが重要ポイント。来季は、まるでトレードのように選手が入れ替わったこの両チームの対戦に注目である。