【日本人のカスハラがひどい理由】おもてなし文化では「5つ星」宿泊施設に勝てない、誤解だらけの日本の接客業
以前から指摘されていることだが、店員の名札が外国人を思わせるカタカナにしておくと、その種の暴言は来ないという。ウチとソトを峻別し、身内、つまり日本語ネイティブであれば、敬語のヒエラルキーの対象になるのが日本語圏の文化である。と同時に、身内扱いイコール自動的にハラスメントの対象になって暴言が出るという「タテ社会」文化は、そろそろ徹底的に根絶が必要だろう。
〝まちの飲食店〟衰退の危機
一方で、改善が必要なのは消費者の側だけではない。サービスを提供する側にも、根本的な意識と姿勢の変革が求められている。 日本には「おもてなし」の文化があり、そのサービスは世界一だと思われているが、全くの自信過剰だと思う。この「日本のおもてなし」だが、様々な点で問題だらけだからだ。 まず顕著なのは、生活に密着したランチ営業などの小規模飲食店が衰退しているという問題だ。いわゆる定食屋、町中華、ラーメン専門店、日本風洋食店といったランチの客単価が1000円に満たないゾーンでの個人営業店がどんどん廃業に追い込まれている。 その結果、このマーケットはコンビニ弁当、牛丼系などのチェーン店に置き換わっている。その結果、こうした業態では、マニュアルに縛られたオペレーションが中心となり、温かみのあるコミュニケーションのない、無機質で非人間的な空間が日常化している。ビジネスの観点から見れば、これは壮大なスケールでの付加価値の消滅であり、労働環境という面や食の環境という面では人間性の否定である。 もちろん、チェーン店の場合は本社管理部門などの固定費が重く、現場を合理化しなければならない必然性がある。悪意から粗利の拡大に走っているわけでは全くない。では、どうして個人経営の小規模飲食店が衰退しているのかというと、原材料の高騰や高齢化、後継者不足などがあるという。 けれども、その奥にあるのはファイナンスの問題だ。まず、日本の金融業界における零細企業への貸出ノウハウが民間には残っていないということがあり、これと裏表の関係でリスク選好マネーが枯渇しているという問題がある。 従って、小規模飲食へのファイナンスということでは、政府系の公庫以外にはチョイスがないし、全体的には業界を支えられていない。いずれにしても、コミュニティに密着した小規模飲食の「おもてなし」が危機に瀕しているというのは深刻な問題だ。