時事問題の「定番」が崩れてしまった――激痩せしたクイズ王、コロナ禍を語る
「東大王」伊沢に鼻フックは似合わない
クイズ界の「いま」を象徴するトレンドは、発想のひらめきが重要となる「謎解き」。牽引者は「東大王」伊沢拓司や、「謎解きクリエイター」松丸亮吾らだ。まさに破竹の勢いで、彼らを中心に据えた番組が次々と放送される。嫉妬や焦りはないのか。 「最近はそういう気持ちもすごくなくて。もう新世代にリスペクトを持って、自分の良さも発揮できると思っています。彼らはやっぱり、すごく誠実な人間性が出ていて、その人の魅力がすごく伝わった。誰か個人が頑張ったというよりは、すごくいいタイミングに番組と出演者と時勢がかみ合ったんだと思っています」 伊沢拓司は古川が籍を置くクイズサークル「短文クイズサークルA(あ)」の後輩。ふたりは旧知の仲だ。 「オタク集団の集まりのように思われがちなクイズの悪いイメージを、面白さで少しでも変えていければと思っていたのを彼らが軽々超えて、とてもいいイメージをつけてくれたんです。そうなると、『あ、もうやることない』みたいになりまして。もう彼らに任せておいたほうがいいので、最近では彼らの足を引っ張らないように、と考えるようになってきました」 「僕は、番組によっては鼻フックさせてもらったりとか、虫を食べさせられたりとかあるんですけれども。そういうのを伊沢がやって、面白いかというと違うと思うので、『それは俺がやるよ』という感じです。彼らが行かないところを、俺がちょっとカバーするから、お前らは真ん中に行ってくれと。誰かに『古川って、伊沢ほど華もないし人気もないけど、ちょっと面白いよね』と言ってもらえたらという気持ちで今はやってます」
公務員からクイズ作家へ 後押しした妻
古川がクイズ作家専業となったのは2014年からだ。後押しをしたのは妻のある一言だった。 大学卒業後、民間企業に就職するが、過酷な労働環境に疲弊し、公務員に転職する。生活保護のケースワーカーという過酷な部署に配属されるものの、古川の性にも合い、3年勤めた。だが、次の異動先の税務課では水が合わずやりがいを失った。29歳にしてすでに定年を待ち望む自分に気づき、愕然とした。 当時、同僚でもあった妻に相談すると、「じゃあ、辞めな」と事もなげに言われた。 「『向いてないから辞めたほうがいいよ。私も公務員だから、もしダメでも食わしてあげるよ』って言われたんです。2人とも職を失ったらどうするの?って聞いたら『生活保護でも受ければいいでしょ』って。彼女も生活保護のワーカーだったので、生活保護を受ける人たちが、どれだけ大変な思いをしているか知っている。なのに、そう言ってくれたんです。そんな人初めてでした。その次の日に辞表を提出しました」 先輩クイズ作家である矢野了平の紹介でクイズ作家の世界へ。ふくよかで愛嬌のあるキャラクターの古川は、バラエティー番組でも重宝された。 「クイズ王の世間のイメージは、堅物、高学歴でちょっといけ好かないコミュ障という感じだと勝手に思っていたので、実際はフレンドリーだし、面白いことを言ったりするよっていうのを知ってもらいたくて、イジられキャラにしてもらったり、コメントも意識して返すようにしたりしていました」